認知症にはアルツハイマー病、血管性認知症などの種類がある。このうちアルツハイマー病はニューロンと呼ばれる神経細胞の内外にアミロイドβが溜まり、神経細胞を死滅させて脳が萎縮することが原因で発症する。
脳を萎縮させるアミロイドβ
認知症の予防・治療の第一人者でアルツクリニック東京院長の新井平伊医師によると、アミロイドβは元々正常な脳にあり、通常は代謝、分解され、脳脊髄液から血液の中へ出て脳から洗い流される。
しかし、何らかの理由で量が増えたり、分解されにくくなると神経細胞の周辺に巻き付くように沈着する。
「アミロイドβが蓄積して塊になってシミのようなものを作るのですが、これを老人斑と呼びます。神経毒として働き、ネットワークを阻害して神経細胞を死滅させてしまいます。どの程度の量のアミロイドβが沈着するとアルツハイマー病の病変が発生するかは個人差もあり、はっきりしていません」(新井医師)
アルツハイマー病は早期発見できる
アミロイドβはアルツハイマー病を発症する20年前から溜まり始めると判明しており、その後ゆっくりと進行していくとされる。
発症前に早期発見し、早期の予防対策をすることで、主観的認知機能低下(SCD)と軽度認知障害(MCI)をアルツハイマー病に進ませないことが求められるが、普及している「脳ドック」には早期発見は期待できないという。新井医師が解説する。
「脳ドックで使われるMRIやCTは脳の形態を撮りますが、脳の萎縮がある程度進行してからでないと異常が見つけられません。
MRIで脳の萎縮が確認できる段階はMCIの後半、つまり、認知症発症の直前。健常~SCDの時点でアミロイドβの沈着を見つけることができれば、その後の予防対策を講じ、発症と進行を遅らせたり、認知機能を回復させることも可能です」
※週刊ポスト2021年5月21日号