パソコンや家電など、2020年に急激に売上を伸ばしコロナ特需と呼ばれる現象が起きている分野がある。コロナに耐える生活も2年目を迎え、2周目の特需はあるのかと言われる中、どうやら2周していると思われるのが「美容整形」の世界だ。ライターの森鷹久氏が、コロナで自粛生活になったおかげで美容整形に踏み出した人の隠しきれない喜びについてレポートする。
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「こんにちは、遅くなっちゃいまして…」
待ち合わせ場所に少し遅れてやってきたのは、都内在住で大手商社勤務の中田真美子さん(仮名・30代)。中田さんも筆者も当然「マスク」姿。平時であれば、マスクを取ったりずらしたりして、顔を見せた上で挨拶するのが礼儀なのだろうが、コロナ禍の今では、挨拶のためといえども外すことは憚られる。中田さんは、なぜかそんな息苦しい今の状況を喜んでいる。
「コロナでしょ? マスクするじゃないですか? このタイミングを待ち焦がれていたというか、私にとっては不幸中の幸い。夏にマスクしてても不自然じゃないのが本当にありがたい」(中田さん)
実は中田さん、昨年春に一度目の緊急事態宣言が発令された直後、念願だった美容外科手術を行い、悲願だった二重まぶたを手に入れたのだ。
目元が二重ではないことは、中田さんにとって子供の頃から気になってならないことだった。まず、自分の母親が二重どころか三重四重のまぶたに大きな目なのに、自身は父親似で腫れぼったい一重。なぜ母と違うのだろうという素朴な思いは、小学生の頃から「なぜ私は友達のように二重で、目が大きくないのか」という疑問になり、中学に入る頃には大きなコンプレックスとなっていたのである。
なんとなく化粧を覚えた高校生の頃にまぶたを二重にする「アイプチ」や「メザイク」などのアイテムと出会い、社会人になってからも、朝起きてまずやることは「二重作り」。二重にしないと外出すらする気にすらならないほどこだわっていた。いっそのこと整形しようかと考えたが、会社や友人、家族に手術を行ったとバレたときのことを考えると腰が引けた。しかし、コロナ禍による「家こもり」になり、一気にタガが外れたと話す。
「施術法にもよりますが、目の手術の後は、かなり腫れます。腫れている間は基本的に外出しないんですが、ちょうど仕事がテレワークに移行したこともあり、もう整形するしかないなって。外出時だって、マスクにサングラス姿でも、最近は周囲から浮かなくなりました。コロナじゃなかったら、夏にマスクする人なんていないから、不自然じゃないなって思って」(中田さん)
二重手術の成功後「できることは今のうちに」と、すぐ同じ美容外科に駆け込み、顔のしわを取るための施術を受け、歯のホワイトニング、歯列矯正も行った。美容外科でも審美歯科でも「たくさん患者が来る」と笑っていたが、自分と同じような境遇の人が多いのだろうと中田さんは思った。
「今しかないと思い、昨年の夏から計250万円以上を、整形などに使いました。コロナ禍が終われば、二度とまとまった時間はとれない。同僚とも長らく会っていませんし、久々の再会で顔が多少変わっていても、そんなに驚かれないんじゃないかと」(中田さん)