《吾、三十にして立ち、四十にして惑わず、五十にして天命を知る》。人は30才で自立して、40才で迷いがなくなり、50才で天から与えられた使命を知る──この、中国古代の思想家・孔子による人生観は、よく知られている。しかし、超高齢化とともに進む「人生100年時代」では、寿命の延長に合わせて年齢を調整する必要がある。
『遅咲き偉人伝 人生後半に輝いた日本人』(PHP研究所)の著者であり、多摩大学名誉教授の久恒啓一さんが指摘する。
「孔子の言葉は人生50年時代のものでした。65才でリタイアした後に40年近くの時間があるいまの世の中に当てはめるなら、孔子の言った年齢を1.6倍する必要があるでしょう」
実際に孔子の人生観を現代に置き換えるとこうなる。
《吾、五十にして立ち、六十五にして惑わず、八十にして天命を知る》
WHO(世界保健機関)の定義では、65才以上は「高齢者」であり、65~74才を「前期高齢者」、75才以上を「後期高齢者」と呼ぶ。その基準に沿って、現代の日本は「超高齢化社会」とされ、健康面や経済面でのリスク増加や、年金問題で国家財政が苦しくなることなど、マイナス面が強調されてきた。
だが、65才でやっと「不惑」となる人生100年時代は、高齢者と呼ばれてからも「天命」を知るまでの準備期間がたっぷりある。まさに、「遅咲きの時代」だ。
「孔子の時代では、50才になったら残り時間がほぼありませんでしたが、現代の50才はまだ折り返し地点です。『早咲き』していたら、時間が余って仕方がない。これからは、定年してからでも遅咲きの花を咲かせて輝ける時代なのです」(久恒さん)
現在、日本には100才を超える人が8万人以上おり、2050年には50万人に達すると予想されている。世界で最も早く超高齢化社会に突入した日本は「遅咲き先進国」として、世界から注目を集めているという。遅咲き時代を生きる私たちは、先駆者たちの生き方から学び、ライフプランの参考する必要があるはずだ。
※女性セブン2021年5月20・27日号