今週は、過去の覇者に数々の名牝が名を連ねるヴィクトリアマイル。競馬ライターの東田和美氏が考察した。
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今年はディープインパクト産駒が大挙10頭出走することが話題になっているが、2006年に行なわれた第1回は、その4年前に旅立ったサンデーサイレンス産駒がやはり10頭出走していて、1~3着を独占した。
その後の勝ち馬のうち、サンデーサイレンスの血を持っていないのは2頭だけ。それがダービーなどGⅠ7勝のウオッカと、牝馬三冠を始めGⅠ5勝のアパパネという歴史的名牝というから、まさにエリート牝馬の晴れ舞台。
昨年春秋のマイルGⅠとスプリンターズSを勝ったグランアレグリアの世代には、やはり昨年の春秋グランプリを制したクロノジェネシス、先ごろ香港のQEⅡ世Cを勝ったラヴズオンリーユー、そして3歳時にJCで2着し、今年の天皇賞(春)でも見せ場たっぷりのレースをしたカレンブーケドールなどがいて、牡馬を凌ぐ活躍を見せている。1つ上のアーモンドアイ、ラッキーライラックらに鍛えられた近年稀に見る牝馬の黄金世代といっていい。
この世代の牝馬で最初にトップに立ったのはダノンファンタジーだった。
3連勝で阪神JFを勝って最優秀2歳牝馬に選出され、チューリップ賞まで4連勝。桜花賞では1番人気に支持され、距離不安のあったオークスはともかく、秋はローズSを勝って、秋華賞でも1番人気に支持された。
しかし、GⅠの舞台では勝ち負けどころか、馬券対象にすらならなかった。
ダノンファンタジーのデビューは2018年6月3日の東京マイル。モズアスコットが勝った安田記念当日。つまり世代最初の新馬戦が行われた週だ。彼女はここを1分33秒9という好時計で駆け抜けたが、2馬身前にいたのがグランアレグリア。これがその後の彼女にとっての「忘れ物」だったように思えてならない。
2戦目の未勝利戦を勝ち上がって重賞も制し、GⅠ阪神ジュベナイルフィリーズで新馬戦のリベンジをと意気込んだが、グランアレグリアは1週後の朝日杯フューチュリティステークスを選択し肩透かしを食う。ようやく対決が実現した桜花賞では、1番人気で受ける立場になりながら、グランアレグリアに先に仕掛けられて懸命に追走。しかし、最後は後続馬にも差されて4着だった。
その後、グランアレグリアは3歳暮れにスーパーGⅡの阪神Cを勝つと一躍短距離路線の主役に躍り出て、1世代上のアーモンドアイさえ打ち破り、今年になると中距離王道路線へと舵を切り替えた。
一方、ダノンファンタジーの4歳時といえば、掲示板に載るのがやっと。今や遠い存在になってしまったグランアレグリアが3歳時に勝った阪神カップに照準を合わせてどうやらこれをクリアしたものの、その後の1400、1200ではあいかわらず苦戦が続いていた。
ヴィクトリアマイルおなじみのキーワードは「復活」。2006年創設以来の女王15頭のうち、前走勝っていたのは2008年のエイジアンウインズ1頭。第1回の勝者ダンスインザムードは桜花賞以後14戦未勝利、第2回のコイウタも8戦未勝利。3冠馬アパパネもマイラーズC4着、ヴィルシーナは2013年にここを勝った後6戦掲示板を外しており、2015年、2016年連覇のストレイトガールの前走は、それぞれ13着、9着。昨年のアーモンドアイでさえ、前走の有馬記念では生涯唯一の着外(9着)だった。