香港の国家安全維持法(国安法)違反事件などを捜査する香港警察のトップが市内の無許可マッサージ店に通っていたとして、警察本部の内部調査を受けていると、地元メディア「香港01」が報じた。同メディアは「辞任は不可避」との見解を示している。
調査対象となっているのは蔡展鵬(フレデリック・チョイ)国家安全処長(国家安全局長官)。香港警察の無許可マッサージ店一斉摘発の際、蔡氏はちょうど店内にいたという。事情聴取を受け、国家安全処長であることが判明すると、香港警察本部の上層部に報告され、1か月の休職扱いとなり、内部調査を受けている。
蔡氏は1995年に香港警察に入り、主に公安部門を担当。2014年に高級警司に昇格し、保安部門の最高指揮官となった。2019年には香港警察長官補佐、2020年には新設の香港警察国家安全処の初代処長に就任した。同処長は昨年6月末の国安法施行に伴い新設された捜査部門を率いる立場で、多くの民主活動家の摘発に関わっており、設立以来、107人が逮捕され、57人が起訴されている。今年1月には米政府の制裁対象に指定されている。
蔡氏は在職中、北京の名門大学である清華大学、英国警察振興局、オーストラリア警察管理学院、カナダ国立警察アカデミー、米国アジア太平洋安全保障研究センター、ハーバード大学ケネディ行政大学院など、多くの大学や教育機関に留学。人権法や公共政策、経営学などの修士号を取得した。また、昨年には香港警察優秀賞を受賞。 今年2月には林鄭月娥(キャリー・ラム)香港行政長官によって、香港の公務員に与えられる最高の栄誉である「香港行政サービス賞」を受賞。蔡氏は同賞を与えられた7人の警察幹部の1人で、まさに香港警察のエリート中のエリートだった。
香港メディアは24時間体制で蔡氏の自宅を張り込み、捜査官が蔡氏の自宅に出入りする模様などを報じている。警察幹部は「香港01」などのメディアに対して、「無許可マッサージ店はマフィア組織が経営に関与している可能性もあり、慎重に捜査している。仮に、蔡氏に処分が下れば、蔡氏は辞任、あるいは引退の道を選ばなければならなくなるだろう」との見通しを明らかにしている。