新型コロナウイルス感染拡大で「医療崩壊」状態が続く大阪府。府内での入院調整中の患者は約3000人、自宅療養者は1万4000人を超えており、入院先が見つからず死亡した人は3月以来、17人に達した(5月10日現在)。感染者が入院できる確率は10%とされる。
そんな状況の中、府議の“特権”が問題視されている。批判の的となったのは、大阪維新の会の中谷恭典・府議だ。4月27日にコロナ感染が判明、5月2日まで入院すると府が発表したからだ。
ネットでは〈多くの大阪府民がコロナに感染しても自宅待機で命を落としているのに、即入院して治療を受けているのは何故〉などと疑問の声が相次いだ。
退院し、自宅療養中の中谷氏に経緯を尋ねた。
「4月27日朝に38.5℃の発熱がありました。呼吸器に持病があるので市立柏原病院の発熱外来を受診したところ、陽性反応が出た。藤井寺保健所に連絡すると『自宅療養かホテル療養になる』というので自宅療養に決めました。
ところがその日のうちに保健所から連絡があり、『(もう一度)市立病院へ行ってくれ』と言われた。そこで入院を伝えられたのです。“特別扱い”という批判があることは承知しているが、保健所、市立病院の指示に従っただけです」
“頼まなくても入院できてラッキーだった”という説明だが、容態が悪化しても入院を断わられ続ける患者がすんなり納得できるだろうか。
どうやら大阪の医療現場は、日頃から“政治家のプレッシャー”に晒されているようだ。
大阪府関係職員労働組合の公式ツイッターは5月8日、こんな「保健師の不満」をツイートした。
〈ある国会議員秘書の方から「電話がつながらない、保健所はもっと仕事をしろ、早く入院させろ」とお叱りの電話。もちろん保健所は対応しなければなりませんが、国の政策で保健所も職員も減らされてきたのに…と思うと、政治って誰のため、何のためにやってるのかと悲しくなりました〉
※週刊ポスト2021年5月28日号