ビジネス

湾岸中古タワマンへの「テレワーク移住」には、困難な未来が待ち受けているかもしれない

東京都・中央区に建ち並ぶタワマン群(時事通信フォト)

東京都・中央区に建ち並ぶタワマン群(時事通信フォト)

 東京都心エリアの新築マンション市場は依然として価格高騰が続いているが、コロナ禍で人気を集めているのが、湾岸エリアの中古タワーマンションだという。だが、住宅ジャーナリストの榊淳司氏は、「安易にタワマンに移り住むと困難な未来が待ち受けている」と指摘する。その理由とは?

 * * *
 2020年のマンション市場はかなり異常だった。その中でも、特筆すべきは東京の湾岸エリアに見られた中古タワマンのブームとでも呼ぶべき売れ行きだった。

 中古マンションの仲介現場からは、「買い手はいるのに、物件が足りない」という悲鳴すら聞こえてきた。当然、価格も上昇基調となった。ただし、それはバブル的な高騰ではなく、需要層の買える範囲内での値上がりであった。

湾岸中古タワマンブームはなぜ起きたか?

 いったいなぜ、このような湾岸中古タワマンブームは起こったのか? 考えられるのは、テレワーク需要である。

 2020年4月に1回目の緊急事態宣言が発出されてから、東京ではテレワークという働き方が急速に広まった。ところが、テレワークが広まる以前、多くのサラリーマンにとって自宅は「寝に帰る場所」であり、そこで日常業務を行うことを想定していなかった。

 ところが、テレワークの普及に伴って多くの人が困惑する。自宅には仕事をする場所がないのである。ダイニングテーブルなどを使った人が多かったようだが、何かと不都合が生じる。配偶者もテレワークを行う場合には、スペースや空間が不十分である。

 何より、誰かが同じ空間にいると打ち合わせや会議ができない。ましてや、小さな子どもがいる家庭ではなお大変である。第1回の緊急事態宣言下では、多くの小中学校、幼稚園などが休校状態となった。

 マンション居住者の場合、住戸の外に出て共用階段の踊り場で仕事をしていた人も少なくなかった。複数で打ち合わせをすると、駐車場に停めてある車の中から参加している人を見かけることも珍しくなかった。彼らは、言ってみれば「テレワーク難民」である。

「もっと広いマンションに引っ越そう」
「テレワークができる共用施設があるマンションがいい」

 そういった需要に答えることができたのが、東京の湾岸エリアに林立しているタワマン群だったのである。80平方メートル以上の住戸も豊富にあり、共用施設は充実。中にはプールや大浴場のある物件もある。敷地内や周辺には小さな子どもが遊べる公園なども豊富。
しかも、築10年以上の物件なら価格はさほど高くない。

 何よりも中古物件であれば、即入居が可能である。引っ越してしまえばテレワーク難民から逃れられるのである。そこで起こったのが、にわかな湾岸中古タワマンブーム。多くの人が湾岸の中古タワマンを買い急いだ。

 しかし、彼らは本当に賢明な選択をしたと言えるのだろうか──。そこには将来的にいくつかの大きな問題がありそうだ。現時点でハッキリしている問題点を指摘しておこう。

関連記事

トピックス

およそ揉め事を起こしそうにない普通の人たちがカスハラの主役になっている(写真提供/イメージマート)
《”店員なんて赤の他人”的な行為が横行》条例施行から2か月、減らないカスハラの実態 都内のコンビニ店員が告白「現役世代のサラリーマンが…」品出し中に激突、年齢確認にブチ切れ、箸に”要らねえよ”
NEWSポストセブン
指定暴力団山口組総本部(時事通信フォト)
六代目山口組の新人事、SNSに流れた「序列情報」 いまだ消えない「名誉職」に就任した幹部 による「院政説」
NEWSポストセブン
会話をしながら歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《親子スリーショットの幸せな日々》小室眞子さんは「コーヒー1杯470円」“インスタ映え”カフェでマカロンをたびたび購入 “小室圭さんの年収4000万円”でも堅実なライフスタイル
NEWSポストセブン
宮城野親方
何が元横綱・白鵬を「退職」に追い込んだのか 一門内の親しい親方からも距離置かれ、協会内で孤立 「八角理事長は“辞めたい者は辞めればいい”で退職届受理の方向へ」
NEWSポストセブン
元女子バレーボール日本代表の木村沙織(Instagramより)
《“水着姿”公開の自由奔放なSNSで話題》結婚9年目の夫とラブラブ生活の元バレーボール選手の木村沙織、新ビジネスも好調「愛息とのランチに同行した身長20センチ差妹」の家族愛
NEWSポストセブン
常盤貴子が明かす「芝居」と「暮らし」の幸福
【常盤貴子インタビュー】50代のテーマは「即興力」 心の声に正直に、お芝居でも日々の暮らしでも軽やかに生きる自分でありたい
週刊ポスト
ホストクラブで“色恋営業”にハマってしまったと打ち明ける被害女性のAさん(写真はAさん提供)
ホストにハマったAさんが告白する“1000万円シャンパンタワーの悪夢”「ホテルの部屋で殴る蹴るに加え、首を絞められ、髪の毛を抜かれ…」《深刻化する売掛トラブル》
NEWSポストセブン
西武・源田壮亮の不倫騒動から5カ月(左・時事通信フォト、右・Instagramより)
《西武源田と銀座クラブ女性の不倫報道から5か月》SNSが完全停止、妻・衛藤美彩が下していた決断…ベルーナドームで起きていた異変
NEWSポストセブン
大谷夫妻の第1子誕生から1ヶ月(AFP=時事)
《母乳かミルクか論争》大谷翔平の妻・真美子さんが直面か 日本よりも過敏なロスの根強い“母乳信仰”
NEWSポストセブン
麻薬の「運び屋」として利用されていたネコが保護された(時事通信フォト)
“麻薬を運ぶネコ” 刑務所の塀の上で保護 胴体にマリファナとコカインが巻きつけられ…囚人に“差し入れ”するところだった《中米・コスタリカ》
NEWSポストセブン
ホストクラブで“色恋営業”にハマってしまったと打ち明ける被害女性のAさん(写真はAさん提供)
〈ちゅーしたら魔法かかるかも?〉被害女性が告白する有名ホストクラブの“恐ろしい色恋営業”【行政処分の対象となった悪質ホストの手練手管とは】
NEWSポストセブン
公務のたびにファッションが注目される雅子さま(撮影/JMPA)
《ジャケットから着物まで》皇后雅子さまのすべての装いに“雅子さまらしさ“がある理由  「ブルー」や小物使い、パンツルックに見るファッションセンス
NEWSポストセブン