『週刊ポスト』(5月24日発売号)が、東京オリンピック・パラリンピックの是非を考える貴重なデータを公表している。スポンサーとなった71社の企業を対象にアンケートを実施し、1、7月開催に賛成か、2、開催の場合は無観客にすべきと思うか、3、有観客で開催の場合、社員に会場での観戦を推奨するか、という3つの質問を投げかけた。国民の7割、8割が反対する巨大イベントを3720億円もの協賛金で支えている彼らには、「なぜ五輪を後押ししているのか」を答える義務がある。
実は、こんな当たり前の報道が他メディアでできないことこそが日本の重大事なのだ。その理由は簡単だ。世界のどこでも、これまでの五輪ではあり得ないことだったが、今回は国内の大手新聞社すべてが五輪スポンサーに名を連ねているからである。五輪には莫大な税金が投入され、環境負荷や国民負担も伴う。開催の是非はもちろん、開催方法や予算の執行状況などを国民が監視できるよう自由に報道するのがメディアの役割だ。だからこそ、世界では五輪スポンサーにはメディア企業は入れないのが原則だし、まして大手メディアが勢ぞろいしてスポンサーになるなど禁じ手なのである。
おさらいしておくと、4種類あるスポンサー契約のうち、3番目にランクされるオフィシャルパートナー(協賛金は約60億円)になっているのが「読売新聞グループ本社」「朝日新聞社」「毎日新聞社」「日本経済新聞社」で、4番目のオフィシャルサポーター(同約15億円)になっているのが「産業経済新聞社」と「北海道新聞社」である。それぞれ系列のテレビ局を持つから、事実上、国内すべての全国紙と全国テレビネットワークがスポンサーとして五輪を推進する立場にある。彼らはアンケートになんと答えたか。それは記事の末尾に紹介する。
自分たちも五輪ムラの住民だから、日本の新聞やテレビニュースは「海外のメディアで五輪中止の社説が出た」という間接的な報道はするものの、自分たちの社説、社論として堂々と中止を主張するところはない。この「令和の大政翼賛報道」を作り上げたのは森喜朗・前組織委員会会長とされる。メディア首脳と頻繁に飲み会を開いて手なずけてきた安倍晋三・前首相も一役買ったのは間違いない。二人は同じ派閥の親分・子分の関係でもある。その遺産を受け継いだ菅義偉・首相や組織委員会が国民世論を無視して強行開催に突き進んでいられるのは、そういう翼賛体制をよく理解しているからだろう。つまり、日本の大手メディアはとっくの昔に五輪マフィアに取り込まれ、牙を抜かれているのである。
元JOC職員でスポーツコンサルタントの春日良一氏も疑問を呈する。
「メディアが五輪スポンサーになることに疑問はありますね。協賛することで、IOCの関係筋などからの情報収集の質と量がグンとアップすることは間違いありません。それは報道のうえでもメリットですが、より大きなメリットは、オリンピックの盛り上がりに乗じたイメージアップや販売増、広告増でしょう。そのために五輪批判ができないとすれば問題ですし、逆に批判したとすればスポンサーであることと自己矛盾してしまいます」
さて、「五輪翼賛会」に参加した新聞各社はアンケートにどう答えたか。