「書は人なり」という格言がある。たしかに丸みがなく角々しい文字を書く人は「なんだか頑固そう」だし、ダイナミックで大きな文字からは「アクティブでたくましい」というイメージを抱く。そして、それらから受ける印象はあながち間違いではないようだ。これまでに3000人以上の筆跡診断を行ってきた“筆跡仕事人”の芳田マサヒロさんが言う。
「手書きの文字からはその人の性格や行動、思考の傾向を読み取ることができます。これは書くという行為そのものが脳とダイレクトにつながっているため。人間の脳には文字を認識したり、書く機能を司っている『後言語野』がありますが、この後言語野の中にある『書字中枢』というところに、その人が長い時間をかけて形づくってきた文字の形状や筆順がデータとして蓄積されているんです。文字を書くときはそれらの情報を汲み上げて記されますから、本人のパーソナリティーや本質、そのときの心境などが表れるのです」(芳田さん・以下同)
また、はがきにかしこまって書いた文字とメモ用紙に走り書きをした文字とで筆跡診断の結果が変わるかというと、そうでもないらしい。
「無意識のうちに書きグセが出てしまうので、ごまかしはききません。無意識がゆえに深層心理や潜在意識が映し出される、というのも筆跡診断の特徴でしょう。自分自身が気づいていない才能や可能性に気づかされるほか、短所だと思っていた部分が実は長所だったと知ることもできます。
また、自分では気づいているけれど、ほかの人には見せていない部分や自分では意識していないけれど、人から指摘される部分も文字から分析できます」
人それぞれ、文字からはその人となりがにじみ出るのだ。
では、結婚したときなどに直筆のメッセージを発表する有名人たちの場合はどうか? 特徴的な点を芳田さんに挙げてもらった。
「男性有名人の場合、枠におさまらず、上や下、横や斜めに線が突出しているケースが多く、有吉弘行さんのようなクセの強い字を書く人が目立ちます。
女性有名人は、線がきれいで文字の角と角がしっかりとした、真面目で手堅いタイプの字がよく見られます。一般社会でも充分に能力を生かすことができるのは女性有名人の方かもしれません。いずれも『様』や『和』などの左払いが長く、人目を引くスター性に秀でている筆跡が多いですね」
もし、自分の筆跡があまりよくないからといって、ネガティブにとらえることはない。
「話し言葉に『言霊』というものがあるように、文字にも『筆霊』があります。こうなりたいという理想に近づく文字の書き方を習慣化させていくうちに、筆跡が変わるだけでなく、性格や行動傾向にも変化が表れ、運気も上がっていきますよ」
では、さまざまな性格や行動に関係する筆跡の特徴を、芳田さんに紹介していただこう。