4月中旬から始まった高齢者向けの新型コロナワクチン接種は、東京と大阪の大規模接種センターでの予約が開始されたことで、いよいよ本格的に動きだした。
菅首相は「1日100万回接種」を目指すとし、先進国で最も低い接種率の挽回、コロナの早期収束を図る狙いだが、その見通しは厳しい。
そもそも東京の会場でも1日1万人。その数は目標の100分の1で、東京都内の高齢者311万にも程遠く、全体から見れば「小規模会場」だ。予約システムの杜撰さが露呈するなど、政権の「接種頑張ってますパフォーマンス」はカラ回りしている。
配布されたワクチンの数が、高齢者の数に対して東京都で最も少ない昭島市では戸惑いの声が上がる。
「当初は各クリニックで行なう個別接種と、会場にお集まりいただく集団接種を同時並行で進める準備をしていました。ところが、ワクチンを保管する冷蔵庫の数が2台しかありませんでした。現在入手できている10箱のワクチンを保管するのに精一杯の台数です。これでは、市内に約3万人いる高齢者に到底行き渡りません」(昭島市健康課)
5月に入ってようやく3台の冷蔵庫が割り振られてギリギリの状況を脱し、ワクチン数を増やしながら集団接種の体制を整えていくことができるようになったという。
混雑して予約の電話やサイトがつながらないという自治体は多く、こうした住民の声を受け、東京都新宿区と足立区は対面で予約を受け付ける窓口を設置した。
東京23区のうち6区では、予約に必要な接種券が約19万6000人分も発送されていない状態であることが発覚したばかりだ。
新潟県長岡市でも、システム不備により集団接種の予約受付に1147人分の超過予約が発生している。いつまで待てばワクチンを打てるようになるのかと不安を抱える高齢者も少なくない。
「ただでさえ医師や看護師の数が足りないのに、オリンピックなんてとんでもない話ですよ」(前出・昭島市健康課)
政治家が口先だけの「安心と安全」を叫ぶほどに、国民の「不安と危険」は高まっていく。
※週刊ポスト2021年6月4日号