和歌山で今、全く趣の異なる2つの事件に、奇妙な接点が生まれている。そしてそのことが、「政治と暴力団」という問題に波及しようとしている。
ひとつは新型コロナ対策の持続化給付金100万円を騙し取ったとする容疑で、今年2月、和歌山市でリフォーム業を営むA氏が和歌山県警に逮捕された事件だ。
〈警察は、男が山口組系暴力団とつながりがあるとみていて、不正に得た金の一部が暴力団の資金源になっていた疑いもあるとみて、調べを進めることにしています〉(2月7日付NHKニュース)
給付金不正受給は全国で多発しているため、この事件自体はさして耳目を集めることはなかったが、事情が変わったのは4月。詐欺罪で起訴されたA氏が、和歌山県選挙管理委員会に自民党支部として届けられている政治団体「自由民主党自由同和会和歌山県支部」の代表者だったことが判明したのだ。
「5月18日に和歌山地裁で初公判が開かれ、おおむね罪については認めています。県警は組事務所側がA被告に手口などを指南した可能性も視野に捜査していて、関係先として和歌山市内の組事務所の家宅捜索も行なわれた。今後は被告の政治活動、暴力団との関係が焦点になってくる。自民党支部と暴力団が関係していたとなれば大ごとだと、地元メディアでは騒ぎになっている」(県警担当記者)
話はこれで終わりではない。逮捕に伴い同団体の代表を辞任したA氏に代わり、3月14日付で代表に就任したと「和歌山県報」(5月7日付)に記載されたB氏という人物も、過去に強盗致傷の罪で逮捕されていたのだ。
短刀で足を刺された
その強盗致傷事件の被害者が、元妻の逮捕で注目を集めている“紀州のドン・ファン”こと野崎幸助氏(享年77)だった。
和歌山県田辺市の資産家だった野崎氏は2018年5月に変死。3年の時を経て、今年4月28日、元妻の須藤早貴容疑者が殺害容疑で逮捕されたことは記憶に新しい。5月19日には起訴されている。
「動機についてはいまだ解明されていませんが、13億円超とも言われる遺産目当ての犯行だったのではないかとみられています」(全国紙社会部記者)
多額の金品を持ち歩いていた野崎氏は過去にも6000万円を別の女性に持ち逃げされるなど、カネがらみの事件に巻き込まれているが、1997年8月には強盗致傷の被害に遭っていた。
当時の報道によると、朝、野崎氏が出勤のために自宅前から乗用車に乗り込む際、助手席に現金850万円が入ったカバンを置いたところ、物陰に隠れていた男に突如襲われ、カバンを奪われたという。捕まえようと追いかけた野崎氏は、男に短刀で足を刺されて重傷を負った。