菅義偉・首相は新型コロナワクチンについて「1日100万回接種」を掲げたが、予約の電話はつながらない、ネット予約もシステムエラーが相次ぐという状態で多くの高齢者が予約できないまま1回目の募集を締め切った自治体も多い。
高齢者へのワクチン接種には、国や自治体が用意した「集団接種会場」で受ける方法と、地域の中核病院(基本型接種施設)や地元のクリニック(サテライト型施設)でかかりつけ医から「個別接種」を受ける方法がある。
この個別接種も予約は必要だが、電話やネットではなく窓口受付に限るなど、医師の裁量で順番を決めるケースがある。
西日本在住の女性経営者Aさん(68)は趣味のサークルで知り合った医師(専門は外科)からこんな誘いを受けた。
「ワクチンの接種券が送られてきたら、私に言いなさい。予約の順番待ちをしなくても、先に打ってあげますから」
Aさんは健康で、これといった持病はない。その医師もかかりつけ医ではない。
「夫に相談したら、『このご時世だからやめておきなさい』と言われました。ただ、断わって気まずくなるのも嫌だから迷っています」(Aさん)
予約が取れない高齢者や65歳未満の富裕層に注目されているのが「ワクチン海外ツアー」だ。
ロックダウンが解除されたニューヨーク市では、「観光客へのワクチン接種」を解禁した。5月12日から市内の主要駅の会場で接種が1回で済むジョンソン・エンド・ジョンソン社のワクチン接種を誰でも無料で受けられる。
米国行きの航空機に搭乗するには出発前3日以内のPCR検査の陰性証明書が必要だが、同州は海外からの渡航者の自主隔離の義務を解除しているため、現地では到着したその日から行動できる(日本帰国時は14日間の自主隔離が必要)。
接種が遅れている南米などからのワクチンツアーが組まれ、ニューヨーク行きの航空運賃は急騰。日本でも「3泊5日ツアー」で接種を済ませ、すでに帰国した人たちがいる。
※週刊ポスト2021年6月4日号