週刊文春が報じた「緊急事態宣言中のキャバクラ通い」によって、5月27日の理事会での審議を経て処分が決まる見通しの大関・朝乃山。“厳罰”は避けられない見通しだが、そんななかで同情を集めている親方がいる。朝乃山を育て上げた錦島親方(元大関・朝潮)だ。昨年12月に65歳定年を迎えると「錦島」と名跡を交換して高砂部屋の部屋付き親方となったが、「先代高砂親方」もしくは「元朝潮」と呼んだほうがしっくり来るかもしれない。
高砂部屋の古参タニマチが語る。
「今回の朝乃山も問題を認めてすぐ謝罪していれば厳罰を免れたかもしれないのに、協会の調査に嘘をついてコトを大きくしてしまった。過去の例を考えると3場所以上の出場停止で十両か幕下からの再出発になるだろう。朝乃山を大関にまで鍛え上げた先代高砂親方にしてみれば、“また育てた弟子に裏切られた”という思いだろう。とにかくこんなにも弟子に恵まれない親方はいない」
元朝潮の「不幸な親方人生」を象徴するのが横綱・朝青龍を巡る問題だ。25回の優勝を数える大横綱ながら、巡業を休んでモンゴルでサッカーに興じるなど、土俵外での素行の悪さがたびたび物議を醸し、最終的には飲酒して暴力事件を起こし強制引退に追い込まれた。そうした問題を起こすたびに元朝潮は監督責任を問われ続けた。現役時代は“大ちゃん”の愛称で人気の大関、引退後は一門の名を冠した高砂の名跡を受け継ぎながら、朝青龍の不祥事のたびに叱責・処分を受け、協会内では出世の道を絶たれてしまった。
昨年12月の定年時にリモート会見で師匠時代の苦労を訊かれ、「いろんな問題を起こす横綱もいた」「かばうにもかばいきれない。自業自得だよ。本人にもそう言っといて」と朝青龍への恨み言で報道陣を笑わせた元朝潮。ところが、その定年会見で「いろいろ(朝青龍のことで)苦労した。落ち着いてきたら朝乃山がタケノコのようにひょこひょこ伸びてきた」と、元々細い目をさらに細めた“孝行息子”が今回の事件を起こしてしまった。
「先代高砂親方の管理責任が問われることはないだろうが、現在も高砂部屋の事実上のオーナーで、部屋の4階に住んでいる。年寄名跡を交換した現・高砂親方(元関脇・朝赤龍)をワンポイントに挟んで、やがては高砂部屋を愛弟子の朝乃山に継がせる構想だったが、その計画も白紙になってしまうかもしれない」(若手親方)
資金面でも大打撃だという。タニマチからの莫大なご祝儀を期待できるはずの朝乃山の大関昇進パーティーはコロナ禍のために開けないまま。昇進パーティーのご祝儀は育てた師匠と折半というのが角界の慣例だが、朝乃山が降格すれば元朝潮の懐に入ってくると見られていた数千万円もフイになってしまう。
「本人の定年パーティーも宙に浮いているので、逸失利益は億をくだらないのではないか」(同前)