香港では昨年6月末に国家安全維持法(国安法)の制定後、民主化活動家らが次々と逮捕・起訴されているなか、2020年4月から2021年3月末までの1年間で、約1800人の香港特別行政府の公務員が退職したことが分かった。1年間の公務員の退職者数としては、2006年4月から2007年3月末までの1400人を抜いて、最多となった。
また、2020年から2021年の1年間では、雇用延長制度を利用せずに定年退職した人を含めると、退職者全体としては約8500人に達し、これも過去最多となった。国安法制定など香港政府が中国寄りになるなか、香港の将来に不安を感じた公務員の退職者が多いとみられる。香港の公共放送「香港ラジオ局(RTHK)が」報じた。
香港政府は昨年施行された国安法にのっとり、公務員全員に「中華人民共和国香港特別行政区に忠誠を尽くす」との誓約書の提出を義務付けていた。その提出期限は今年3月末だったが、署名拒否者は129人で、このうち25人が退職、104人が停職となった。停職中の公務員は今後、辞職を勧告される可能性があるという。
香港政府公務員事務局の聶徳権局長は4月の香港立法会(議会)で、誓約を拒否した公務員から「言論の自由を侵害する」「内容に同意できない」といった理由が挙げられたと報告。また、署名拒否者以外で、3月末までに辞職した公務員約1800人の大半が誓約書を提出していない。
香港メディアによると、これらの辞職した公務員の多くは「近い将来、香港を離れるつもりで、すでに英国やオーストラリア、カナダへの移住が決まっているか、今後、移住の手続きを行う」と答えているという。
しかし、香港立法会は4月28日、香港政府が裁判所の命令なしに、いかなる人物であれ、香港への入境や出境を禁止する権限を持つという香港移民法を可決した。この法律は事実上、中国本土型の出国禁止措置の道を開くもので、香港市民の海外への移民を制限する法律だとの指摘も出ている。