老後のため、あるいは子供のために元気なうちに終活や身辺整理をしておくのは、いまや「親のたしなみ」のように言われる。子供世代もそれを望むケースが多い。親が亡くなる頃には子供も高齢者というのが当たり前の長寿社会ならではの「ニュー・ノーマル」かもしれない。しかし、そのなかでも最大の懸案である「実家の処分」には様々な落とし穴があるから慎重に進めることが大切だ。『週刊ポスト』(5月24日発売号)では、「子供のため」を思った気配りが大失敗する理由と対策を特集しているが、特に老齢になってから不動産を売却したり、住み替えたり、アパート経営を始めたりすることのリスクを警告している。
何が「貧乏父さん」の原因になるかは本誌特集に譲るが、同特集でアドバイザーとして登場している住宅ジャーナリストの榊淳司氏に、改めて「売れるマイホーム、売れないマイホーム」と、「タワーマンション節税」のキモを聞いた。
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団塊前後の世代が買った「夢のマイホーム」が今の時代には資産価値がほとんどなくなってしまったという話はよくあります。6000万円で買った家が、いざ売ろうとすると500万円の価値もないといったケースで、相続した子供が処分に困ることは多い。
不動産といえど、その価値は需要があるかないかで決まります。例えば、かつて東京郊外の拠点駅からバスで20分くらいのところに50戸ほどのミニ開発タウンがたくさん作られましたが、バブル時代にはそれが6000万円もしたわけです。買った当時はお父さんは働き盛りで都内に1時間以上かけて通勤し、お母さんは地元で子育てやパートに忙しい。やっと子供が独立し、ローンが終わってこれから余生を楽しみたいと思った頃には、場所が不便だからと子供や孫はめったに遊びにも来てくれない。そして近所を見渡せば空き家だらけになっていて、その規模のミニタウンの中古では、売ろうとしても買い手はまずいない。いくらでもいいから売りたいと言っていると500万円にもならない、というのは珍しくもない現実なのです。
まだマンションのほうが売りやすい。築40年の戸建ては相当手を入れないと住めませんが、マンションの寿命は長いので、100万円くらいかけて内装工事をすれば住めますからね。それに、マンションのほうが駅に近い物件が多いことも有利です。ただし、やはり買った価格からは大きく減額されることを覚悟しなければなりません。神奈川県の中核都市からバスで20分ほどの分譲マンションの例だと、2000万円くらいだった物件が500万円前後でないと売れなくなっています。