昨年、芸能活動50周年を迎えたお笑い芸人の間寛平(71)。コロナ禍で節目の年に開催できなかった全国ツアーが、今年6月からスタートする。波瀾万丈と言っていい人生を送ってきた彼は、未曾有のパンデミックに覆われたこの世界で一体どんな笑いを届けてくれるのだろうか。本人に話を聞いた。
1970年に吉本新喜劇に入団した間寛平。「かい〜の」「アヘアヘ」など数多くのギャグを生み出して国民的人気を獲得した彼だが、他方では連帯保証人を引き受けて借金地獄に陥るなど、さまざまな困難も経験している。そのたびに「絶対に神様がいてるやろ」と信じて芸能活動を続けてきたそうだ。
「人を裏切ったり騙したりしていないから、絶対になんとかなるやろうと思ってた。頭の上にいてる神様がホンマに支えになりました。ずっと祈ってましたもん。
例えばね、今日中に150万円を払わなあかんのに、手元に3000円しかないことがあった。午後の新喜劇が始まる前に借金取りから電話がくるわけ。どうしよう思ってたら、劇場のお茶子さんが“どないしたんや? えらい元気ないな”って心配してくれて、事情を説明したら“なんやねん、すぐに振り込んだるわ”って立て替えてくれた。
これは絶対に返さなあかん思って、新喜劇終わってから営業したりキャバレーのショーをやったり一生懸命働いて、それで必ず返していったのよ。信用してもらえたから借金取りに追われても助かっていった。そういうのがすごく多かったですね」
困難は借金だけではなかった。1995年に発生した阪神・淡路大震災では新築のマイホームが全壊。2010年には前立腺がんが発覚。だが早期に放射線治療を受けたことで大事に至ることなく生活を続けていた。そんな中、2017年に木登り中に落下し、全治1ヶ月の重傷を負うことになる。自宅がある兵庫県宝塚市を盛り上げるために動画配信を行なっていた最中の出来事だった。しかしここでも「神様が助けてくれた」と彼は語る。
「“バキッ”って木が折れた瞬間に気を失ったから、落ちた瞬間の記憶は全くないねん。けどバーンと地面にぶつかったら、生きてるから痛みがわかるんですよ。“痛っ! 木から落ちた!”って気づく。肋骨が9本折れて、鎖骨も折れて、しかも肋骨が肺に突き刺さって倒れているわけよ。
ただ、普通は人間が落ちるときは頭から落ちるねんな。なのに自分の場合はたまたま横に落ちていった。木の下には何もないのに、何かが支えてくれたような感じがしたわけ。これは不思議やろ。神様が助けてくれたんちゃうかな」