5月26日午前中、Twitterのトレンドワードランキングで、一時「#東京五輪中止」が1位に躍り出た。同日、朝日新聞が掲げた「夏の東京五輪 中止の決断を首相に求める」という社説が話題になったものだ。もう何か月も前から国民世論は7割、8割が今夏のオリンピック開催に反対していたのだから、いまさら、ようやく、という印象は拭えないが、それでも日本を代表する“クオリティ・ペーパー”がはっきりと「中止を求める」と主張したことのインパクトは大きかった。
ただし、個々のツイートを見ると、必ずしも「よくぞ言った!」という賞賛ばかりではない。むしろ、朝日新聞に対する不信感を表明するユーザーが多いのだ。実は、その2日前に発売された『週刊ポスト』で、「『東京五輪は開催か中止か』公式スポンサー71社の回答」と題する特集記事が掲載された。さらにNEWSポストセブンでは、それに先立つ5月22日に、「五輪スポンサーに雁首揃える大新聞6社に『開催賛成か』直撃」という記事を掲載していた(関連記事リンク参照)。
朝日新聞社をはじめ、読売新聞グループ本社、毎日新聞社、日本経済新聞社、産業経済新聞社、北海道新聞社という5大全国紙を含む6社は東京五輪のスポンサーになっている。これは五輪の歴史でも異例のことだ。五輪の開催是非や開催方法について検証・報道すべきメディア企業はスポンサーにはならないのが原則であり、これまでの大会では、1社がスポンサーになればライバル他社は外れ、運営をチェックする立場に回るのが暗黙のルールだった。この「五輪大政翼賛会」があるから、政府と組織委員会は国民の反対を押し切って強行開催に突き進んでいるのではないか、と疑問を呈したのが週刊ポストだった。しかし、朝日、日経、産経、北海道は回答を拒否し、読売と毎日も、「安全が大事」「医療体制が大事」などと、当たり障りのない答えを返しただけだった。当然、編集部とネット上には、新聞各社に対する怒りの声が多数寄せられた。
朝日がポストの報道を見て慌てて社説を出したかどうかは定かでないが、このタイミングで社説を出すなら、アリバイ程度の内容では済まされない。なぜ今のタイミングでそう主張するのか、一般読者にもわかるように社の立場を明らかにするものでなければならないはずだ。朝日はどう書いたのか。
<この夏にその東京で五輪・パラリンピックを開くことが理にかなうとはとても思えない。人々の当然の疑問や懸念に向き合おうとせず、突き進む政府、都、五輪関係者らに対する不信と反発は広がるばかりだ>
その通りだと思う一方、それならなぜ朝日はこれまで、「人々の当然の疑問や懸念」に向き合ってこなかったのか。この社説には3つの疑問が残る。