いよいよダービーだ。皐月賞馬が好枠におさまり人気が集まりそうだが、競馬ライターの東田和美氏は興味深いデータを挙げた。
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過去10年のダービー馬はディープインパクト産駒6頭、キングカメハメハ産駒2頭と「ダービー馬はダービー馬から」を実証している。さらに遡ってもネオユニヴァース産駒のロジユニヴァース、タニノギムレット産駒のウオッカ、さらにシンボリルドルフ産駒のトウカイテイオーと、輸入種牡馬産駒が圧倒的に強かった中、激戦を勝ち抜いた日本生まれのダービー馬が平成のダービー馬を送り出している。
他のダービー馬の父である日本馬はアグネスタキオンとステイゴールドだが、どちらもダービーの舞台には立っていない。ダービーで負けた馬の産駒でダービーを勝ったのは2014年のハーツクライ産駒ワンアンドオンリーただ1頭。ちなみにオルフェーヴルの母の父メジロマックイーンもダービーには出走していない。勝った馬は間違いなく種牡馬になるレース。血統背景も厳選されている。
皐月賞まで4連勝のエフフォーリアは父エピファネイア(その父シンボリクリスエス)、母の父ハーツクライという“ダービー2着馬血統”、ブービー人気ながらオークスで6着に健闘したミヤビハイディも同じ配合だが、中央で勝っているのはこの2頭だけなのだ。
エピファネイアはサンデーサイレンスが曽祖父となるため、サンデー系牝馬との配合も多く、中でもディープインパクト産駒の牝馬からは、アリストテレス、ムジカ、オーソクレースなど多くの活躍馬が出ている。また父エピファネイア、母の父キングカメハメハという活躍馬も多い。代表格が3冠牝馬デアリングタクトだ。
ちなみに父ディープインパクト、母の父キングカメハメハとなると、ワグネリアンというダービー馬が出ている。キングカメハメハ産駒で母の父ディープインパクトというGⅠ馬がいないのは意外だが、ダービー馬ドゥラメンテをはじめ、ラブリーデイ、ローズキングダムからチュウワウィザード、レッツゴードンキといった母の父サンデー系のGⅠ馬が誕生している。やはりダービー馬のDNAは重視したい。
ダービーを勝つ重みは他のレースとは比較にならないという。武豊にして10度目、昨年調教師に転身したGⅠ26勝の蛯名正義は25回挑戦しながら、ついに勝つことはできなかった。横山典はデビュー24年目、15回目の騎乗でようやくダービージョッキーとなった。その息子で22歳の横山武史が2回目の騎乗で人気に応えて勝ち切ったら、日本競馬は新たな時代に入る。いまだ勝ったことがなく「自分にはダービージョッキーになる資格がないのでは」と悩んだことのある先輩騎手たちの思いはいかばかりのものか。
2019年、全勝だった皐月賞馬サートゥルナーリアが単勝1.6倍ながら4着に敗れ、「乗り替わりではダービーに勝てない」というのは、データというよりも“最低条件”ではないかいう声さえあった。にもかかわらず、今年は17頭中10頭が前走からの乗り替わりによる出走、うち8頭がテン乗りとなる。
この乗り替わりの経過を見てみると、川田騎手は前走まで5戦続けて乗っていてレッドジェネシスではなく、テン乗りのヨーホーレイクに騎乗。またアドマイヤハダルはテン乗りでM・デムーロ騎手だが、2走前に乗って若葉Sを勝っている松山騎手は、前走M・デムーロで皐月賞7着だったグラティアスに騎乗。そして戸崎騎手は、騎乗経験のあるタイトルホルダーでもバジオウでもなく、グレートマジシャンだ。浜中騎手もバジオウに騎乗経験がありながらラーゴム。それぞれ“大人の事情”などがあるのかもしれないが、この時期の3歳馬にとって乗り替わりはプラスとはいえない。
ダービーに2勝し、今年限りで競馬界を去った角居勝彦元調教師は著書『さらば愛しき競馬』(小学館新書)で、レーン騎手に乗り替わったサートゥルナーリアの敗北に触れつつ、こう記している。
《才能ある3歳馬ならば、使える脚がレースごとに伸びていく》
《こういう馬の成長を、テン乗りでは実感できません》
《追い出しが短くなったり、伸びすぎて手前で垂れたりということが起こりやすい》
やはりテン乗りで勝てるほどダービーは甘くない。