中国甘粛省白銀市の山中で5月22日に行われた100kmのトレイルラン二ング大会では、突然のひょうや雨、強風に見舞われ、167人の参加者のうち、国際級の選手を含む21人が死亡するという大惨事となった。その一方で、地元の羊飼いの男性に助けられて、6人の選手が奇跡的に一命をとりとめていたことが明らかになった。
この羊飼いの男性は朱克銘氏で、中国国営新華社通信など中国メディアは朱氏を「英雄」として報道している。朱氏自身は「何もできずに、救えなかった人もいた。申し訳なく思っている」と語っているという。
大会当日、スタート時は晴天で多くの参加者は短パンやTシャツ姿の軽装だった。しかし、午後になって天気が急変。気温は0度まで下がり、雨などに濡れた結果、低体温症で亡くなったランナーもいたとみられる。
当日、羊の放牧をしていた朱氏は、昼頃から雨風が強くなったため、羊を牧場に戻して、自身も非常時用に衣服や食料を保管していたヤオトン(洞窟式住居)に避難していた。そこで、ヤオトンの近くに立ち尽くして、動かなくなっていた選手を発見。痙攣を起こしているようだったので、ヤオトンの中にいれ、火を起こして体を温めて、お湯や食べ物を与えたという。
朱氏が近くを見回ってみると、この選手と同じように、山中に倒れて動かなくなっている選手を見つけ、ヤオトンの中に連れてきて介抱。このように救助した選手は男女3人ずつの計6人になった。
このうちの1人の張小濤氏は中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」で、「雨と冷たくて強い向かい風を受け、指の感覚がなくなり、体も冷たくなった。視野がぼやけ始め、強風で10回以上も転んだ。ついには手足まで硬くなり、体が動かなくなった。最後に転んだ時にはもう起き上がれず、そのまま意識を失ってしまった」と報告している。
張氏が意識を取り戻したのは、それから2時間半後で、朱氏のヤオトンのなかだったという。
張氏は倒れた際、GPS機能が付いたスポーツウオッチのSOSボタンを押したというが、山中だったため、車などが入れず、救助隊の到着が遅れたようだ。「朱さんが助けに来なければ、私は確実に死んでいただろう。朱さんは命の恩人だ。私のほかに5人の選手が助けられており、私たちは朱さんに本当に感謝している」と張氏は書いている。