放送作家、タレント、演芸評論家で立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、テレビ第一世代を見送りつつ、自分の含めたテレビ第二世代が50周年イヤーを迎える今とこれからについてつづる。
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永いことこの仕事をやっていると、若き日に仰ぎつつ恐れて見ていた人達(テレビマン)がこの節バタバタと亡くなっていく。そんな年回りなのだ。テレビ第一世代の澤田隆治(88歳)。『てなもんや三度笠』、漫才ブームの『花王名人劇場』のP(プロデューサー)である。晩年、私の知り合いなどに「一度キチンと高田さんとは話をしなければいけない」と言っていたそうだが話もしないで終わった(その方が助かる)。
若き日、日本テレビの制作部へ行くと、この人の姿があるだけで恐れおののき、小さくなりながら尊敬をしていた。大河ドラマを破った男・細野レジェンド邦彦(86歳)である。
タダ者ではないその雰囲気、テレビとはやっぱりヤクザな商売だなと思った。ケンカに明け暮れた毎日だったときく。『コント55号の裏番組をブッ飛ばせ!』で野球拳をやり、女優、タレントを脱がしていった。『ウィークエンダー』で曲者・桂朝丸(ざこば)、泉ピン子をスターにおしあげた。テレビ番組でひんしゅくを買い占めた人である。
訳知り顔の新聞などに叩かれると「娯楽は不良性、下品さ。ホームランを打ったこともない人から打ち方を教わる必要などない」。ごもっともである。新聞や雑誌、今ならネットでも、作れもしない奴がテレビ評など書いている。バッターボックスにすら立った事のない奴の意見など必要なし。
テレビを最初に作った人達が去っていく。そりゃそうだ、それを見ていたテレビ第二世代の私達が、気がつきゃ業界渡世50年になるのだから。たしか『ドラえもん』も50年でしょ。森田芳光をリスペクトする人達が今「監督生活50年」という事で本を創っている。先日の『五木ひろし50thアニバーサリーITSUKIフェス』も当人の人徳だろう、和田アキ子、田原俊彦、ももいろクローバーZ、爆笑問題らが集まり、大盛りあがりの内に終わったときく。
そして吉本新喜劇の看板、間寛平芸能生活50周年+1ツアー『いくつになってもあまえんぼう』が開催される。6月6日が東京でそのあと仙台やら福岡、富山などまわって10月の9日10日と大阪なんばグランド花月である。若手の勢いのある漫才をみせてからの御存じ新喜劇である。サプライズ大物ゲストも「アヘアヘ」と登場とか。
団塊世代はほとんど業界50周年の年なのだ。誰も気がついてはくれないし、びた一文リスペクトもされないのか「50周年トークライブか本でも出しますか」と誰一人言ってこない。考えてみれば子供達からもひと言もなかった。トホホ、まだ働けって事か。60周年までもつかなぁ。
イラスト/佐野文二郎
※週刊ポスト2021年6月11日号