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死を間近にした高齢者が自宅で倒れた…連絡すべきは「かかりつけ医」

自宅でバランスボールを使って運動する橋田さん(2014年11月)

最期まで元気に過ごすため自宅での運動を欠かさなかった橋田壽賀子さん(2014年11月)

 誰にでも訪れる「最期の時」。その瞬間をどこで迎えるかということは大きな問題だ。たとえば、死を間近にした高齢者が自宅で倒れるケースでは、救急搬送のための119番が不幸な結果を招くことがある。

『日本のいちばん長い日』などの著書がある作家の半藤一利さん(享年90)は今年1月、自宅で妻とおしゃべりをしたのちに倒れた。

「数日前から歩行困難になり、本人が死期を悟っていたことなどから、倒れた半藤さんを見つけた奥さんは、かかりつけ医に連絡。駆けつけた医師が老衰による死亡を確認しました」(出版社関係者)

 在宅医療にかかわる長尾クリニック院長の長尾和宏医師は「救急車でなくかかりつけ医を呼んだのは実に賢明な判断」と指摘する。

「救急車を呼んでいたら、『心肺停止をみたら蘇生』を義務とする救急隊員が延命処置を施したでしょう。その場合、入院して意識が戻らないまま管だらけで、その果てには延命治療となり、病院でたったひとり幸福とはいえない最期を迎えるケースもあります」

 病院に入院せず、自宅で最期を迎えるためには、日頃から体を鍛えておくことも肝要だ。脚本家の橋田壽賀子さん(2021年4月逝去、享年95)さんは83才から週3回、1回1時間のトレーニングを欠かさなかった。橋田さんが83才のときから12年間パーソナルトレーナーを務めた八代直也さんが語る。

「30分はひざや股関節などの関節をほぐすコンディショニングを行い、後半はバランスボールやバーベルを用いたトレーニングでした。橋田先生は90代になっても20kgの錘を持ってスクワットをして、『最後まで自分の足で歩いて、人に迷惑をかけたくない』とよく仰っていました」(八代さん)

 年齢を重ねても体力を維持すれば、ピンピンコロリに近い死に方ができるという。

「老衰で亡くなるかたでも、死の2週間前まで体力があり、普通に外出してゲートボールをしたり、自転車に乗っていたというケースが多いんです。多くの場合、そこから2週間で一気に弱って自然に枯れるように亡くなる。つまり、老衰で亡くなる場合でも、それなりに体力を保てれば、“準ピンピンコロリ”で逝くことができます」(長尾さん)

 振り返れば、田村正和さん(2021年4月逝去、享年77)も、渡哲也さん(2020年8月逝去、享年78)も、橋田さんも、生前から「理想の死に方」を周囲に語っていた。

「大切なのは、自分がどのような最期を迎えたいのかを、普段から身近な人と話し合っておくことです。特にコロナ禍では入院すると家族と会えず、苦しい死を迎えるリスクがある。どうすれば幸せな死に方ができるかをよく考えて、しっかり対話をしてほしい」(長尾さん)

 先人たちが身をもって示した理想の逝き方から、多くのことを学べるはずだ。

※女性セブン2021年6月10日号

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