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コロナ後遺症で「精神疾患」の可能性 脳へのダメージが原因か

ポーランドの医療施設ではリハビリとして、脳の反応を回復させるためのゲーム・プログラムが提供されている(写真/アフロ)

ポーランドの医療施設ではリハビリとして、脳の反応を回復させるためのゲーム・プログラムが提供されている(写真/アフロ)

 かねてより新型コロナの後遺症として、嗅覚や味覚の異常、脱毛、息苦しさなどが指摘されてきたが、4月に英オックスフォード大学などの研究チームが発表した研究結果が多くの研究者に衝撃を与えた。

 研究はアメリカを中心に23万6379人の新型コロナ患者の診療データを分析。患者の約34%が回復から6か月以内に精神・神経疾患を発症したことを突き止めた。実に3人に1人が精神・神経疾患を発症したとの結果に、研究を主導したオックスフォード大学の精神科医は、「コロナ感染症回復後はインフルエンザやほかの呼吸器疾患よりも精神・神経疾患が多くみられることが判明した」と分析した。

 検証した14種類の精神・神経疾患のうち、最も多かったのが不安障害(発症確率17%)で、うつ病などの気分障害(14%)が続いた。

 医療経済ジャーナリストの室井一辰さんが指摘する。

「これまで国内では、新型コロナの重い後遺症として、血管が詰まることによる脳梗塞や心筋梗塞が注目されてきました。

 ただし今回の研究が明らかにしたように、先進諸国ではうつや不安障害、不眠などの精神疾患と、めまいや動悸、頭痛などの神経疾患への関心が高い。そうした精神・神経疾患は、回復後も続く『Long COVID(ロング・コビット)』として問題視されています」

 カリフォルニア州在住のニック・ブラントマンさん(44才)さんは昨年11月6日に発熱、味覚喪失などの症状を自覚し病院へ行った。検査の結果、翌日、新型コロナの陽性が判明し、およそ20日後に医師から回復宣言を受けた。それから半年が過ぎたが、現在も苦難の日々を送っている。

「これまで精神科系の病歴はありませんでしたが、回復宣言後に不安、不眠、うつなどの症状を感じるようになり、今年2月に脳神経外科と内分泌科を紹介されました。MRIや脳波測定などの検査を重ねても原因はわからないままで、現在は睡眠薬や向精神薬などによる対症療法をしながら生活していますが、以前のような毎日に戻れる兆しはありません。出口が見えない精神疾患に苦しんでいます」(ニックさん)

 さらに、ニックさんはこう続ける。

「いまも他人と一緒に長い時間を過ごすことがつらく、スーパーなどで買い物をするとすごく疲れます。眠れない夜が続いて、一睡もできないまま朝を迎えてベッドから出る瞬間は、高いところから飛び降りるような恐怖を感じます。

 現在はリモートワークのため仕事と治療を両立できていますが、出社が必要になると難しいでしょう」

コロナ感染者が、入院先が決まるまでの間、一時的に待機する「入院患者待機ステーション」(時事通信フォト)

コロナ感染者が、入院先が決まるまでの間、一時的に待機する「入院患者待機ステーション」(時事通信フォト/大阪府提供)

 世界の研究では、コロナの後遺症で生じる精神・神経疾患として、不安障害や気分障害、せん妄、睡眠障害、記憶障害、感情の喪失、倦怠感などが挙げられる。

 そうした精神・神経疾患の原因について完全には解明されていないが、専門家は「コロナ感染による脳へのダメージが原因ではないか」と口を揃える。

 国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎さんが指摘する。

「脳内には約1000億もの神経細胞があり、複雑に接続し合って神経回路を作っています。コロナに感染すると神経回路が壊れたり、上手に働かなくなってしまい、精神・神経疾患を発症すると考えられます」

 6月3日発売の『女性セブン』では、「ロング・コビット」に苦しむ複数の日本人の証言や、脳にダメージを与える詳しいメカニズム、さらには、コロナ感染による脳へのダメージが、数十年にわたって深刻な症状をもたらす可能性などについても医療関係者らへの取材を元に詳報している。

小池百合子都知事も後遺症について「甘く見ないで」と警告(時事通信フォト)

小池百合子都知事も後遺症について「甘く見ないで」と警告(時事通信フォト)

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