陰謀論が流行している──久しく顔を見ぬ父や母が、あるいは家に籠もる妻や子が、陰謀論にのめり込んだら……決して他人事ではない。
「80代になる父親はコロナの情報を気にしていて、ネットで色々調べているらしい。昨年の緊急事態宣言の時には心配して『コロナはお湯で予防できる』というデマをLINEで送ってきた。それはよかれと思ってしてくれたことだからいいとして、今度は『ワクチンは殺人兵器という情報もあるし、危険だから打ちたくない』と言ってきた。命に関わることだから、頼むから受けてくれと説得しましたが、怒って頑なになってしまった」(50代男性)
このように、家族や友人など身近な人が陰謀論者になった場合、どう接すればいいのか。
「背後要因に目を向けることです。陰謀論そのものは否定せず、実生活に不満や不安がないか、そうした悩みや愚痴を聞いてあげることが大切です。コロナへの不安はもちろん、例えば職場で配置転換にあった、友人関係のトラブルを抱えているといったことが陰謀論に嵌まるきっかけだったケースもあり、実社会でのトラブルが解決したらいつの間にか言わなくなったという話もよく聞きます」(陰謀論に詳しい評論家・真鍋厚氏)
もちろん、人が何を信じていても、止めることはできないし、すべきではない。ただし、陰謀論を安易に拡散する行為だけは慎しむべきと、サイバーアーツ法律事務所の田中一哉弁護士は言う。
「三浦春馬さんの事務所のケースと同様、陰謀論の中で特定の誰かに対して、ありもしない事実を書き込めば訴えられる可能性はあります。ツイッターでリツイートしただけでも、議論の余地はあるものの、名誉棄損に当たりうるという判例が示されています」
陰謀論が特定の個人を傷つける可能性があることも、考慮しなければならない。
※週刊ポスト2021年6月11日号