ここ数年どんどん規模が縮小しているのが「葬儀」のかたちだ。新型コロナウイルスの影響もあり、家族葬や通夜を省いた一日葬、さらには通夜を省略し一度もお経をあげない「直葬」も増えている。
葬儀同様にあり方が変わったのが「墓」だ。葬儀・お墓コンサルタントの吉川美津子氏がいう。
「墓は先祖代々受け継ぐものとされていますが、最近は家督という考え方が薄れ、少子高齢化もあり墓を継げる人が減っています。そのために様々な問題が生じています」
一般財団法人日本消費者協会が2017年に行った「葬儀についてのアンケート調査」への回答では、〈代々の墓は東京だがその墓に入る予定の者が誰も東京にいない〉〈墓の移転に直面している〉といった悩みの声が多かった。
「『親が亡くなり、今あるお墓をどうすればいいか分からない』という相談を多く受けます。その場合、遠方の実家のほうに墓があるなら、その近くに住む親戚に引き継いでもらう、子世代の住むエリアの墓地に改葬するなどの選択肢があります」(吉川氏)
こうした「墓じまい」が話題になる一方、大阪市にある柳谷観音大阪別院・泰聖寺の純空壮宏住職は、「最近はそれ以上に『仏壇じまい』の相談が多い」と語る。
「田舎の両親が他界したり、介護施設に入るなどして実家を処分する時、多くの人が仏壇の処理に困っています。仏壇はそのままの状態では廃品業者も回収してくれなくて、僧侶が『魂抜き(閉眼供養)』をする必要がある。魂を抜いた仏壇は家具と同じ扱いになり、業者も回収に応じてくれます」
純空住職が魂抜きをする際は、依頼者の家で供養をした後、同行させた回収業者が仏壇を引き取っていくのだという。
「場所にもよりますが、費用は魂抜きが2万~3万円、回収費用が2万~4万円。魂抜きをした後に粗大ゴミとして出せば2000~3000円で処分できますが、近所の人の目もあるのでなかなかやりづらいでしょう」(純空住職)
仏壇同様、位牌の処分を希望するケースも増えてきた。
「位牌を処分する際は、『没年月日と戒名だけは記録しておいてほしい』と伝えています。
すべてを廃棄したら、ご先祖様のことが何も分からなくなってしまいます。これからは仏壇も位牌も処分が進んで、手を合わせるところがない家ばかりになっていくでしょう」(純空住職)