日本美術応援団団長である美術史家・明治学院大学教授の山下裕二氏と、タレントの壇蜜が、日本の美術館や博物館の常設展を巡るこのシリーズ。今回は東京都・目黒区の日本民藝館の第1回。2人が日常の身近な工芸品を見て回る。
壇蜜:湯釜に手形だ、かわいい! 手の大きさから察するに大人の仕業ですね。
山下:湯釜を触っちゃって“アチチ~!”って。
壇蜜:その名も『手押文湯釜』とは遊び心が憎いですね。日本民藝館では湯釜や囲炉裏で使う自在掛、お皿など工芸品も多く展示されています。竹の掛花入はわが家でも庭の水仙を差していたなぁ、なんて思い出して親しみを感じました。
山下:そうしたどの家にもあるようなものに美を見出したのが、日本民藝館を創設した柳宗悦です。飾って鑑賞する芸術品ではなく日常の身近な工芸品へ目を向け、使いながら変わりゆく様も丸ごと慈しみました。
壇蜜:経年の消耗も風合いとして愛でたのですね。
山下:柳は日本各地で神仏像を刻んだ木喰明満の「木喰仏」も見出しました。庶民信仰の小さな社寺に遺され、民衆に寄り添う木喰仏も柳の眼には“生活の中の美”と映ったのでしょう。
壇蜜:なんてほのぼのとした、ふくよかな微笑み。
山下:微笑仏とも呼ばれます。柳は大正13年に木喰仏と出会い一目で惚れ込みますが、価値はおろか、当時は木喰明満の存在すら知られていませんでした。
【プロフィール】
山下裕二(やました・ゆうじ)/1958年生まれ。明治学院大学教授。美術史家。『日本美術全集』(全20巻、小学館刊)監修を務める、日本美術応援団団長。
壇蜜(だん・みつ)/1980年生まれ。タレント。執筆、芝居、バラエティほか幅広く活躍。近著に『三十路女は分が悪い』(中央公論新社刊)。
●日本民藝館
【開館時間】10時~17時(最終入館は閉館30分前まで)
【休館日】月曜(祝日の場合は開館し、翌平日が休館)、年末年始、その他臨時休館あり/西館(旧柳宗悦邸)公開日会期中の第2水曜・土曜、第3水曜・土曜(10時~16時半、最終入館は閉館30分前まで)
【入館料】一般1200円
【住所】東京都目黒区駒場4-3-33 ※開館情報はHPにて要確認
撮影/太田真三 取材・文/渡部美也
※週刊ポスト2021年6月11日号