緊急事態宣言も延長され、さらには梅雨で悪天が続くこの季節。自宅で静かに過ごす時間も多そうだ。そんなときには、読書でも楽しんでみてはいかがだろうか。注目の新刊4冊を紹介します
『世界一細かすぎる筋トレ図鑑』
岡田隆/小学館/1870円
バズーカ岡田さんの「肩にメロン、背中に鬼、尻にバタフライ」の勇姿に、ここまでムキムキにならなくてもと笑ってしまうが、並の運動ではあの体にならない。肩、腕、背中など狙った部位を鍛える方法が道具も含めてそれこそ事細かに図解される。「世界一」の看板に偽りなし。トレーニングには停滞期がある。眠った筋繊維を覚醒させれば新たな成長期を迎えられるそうだ。
『月下のサクラ』
柚月裕子/徳間書店/1870円
機動分析係を志し、人知れず研鑽を重ねてきた米崎県警の森口泉巡査、33才。尾行テストに失敗するも、なぜか捜査員失格と烙印を押した黒瀬警部の引きで異動が叶う。その直後会計課の金庫から約1億円が消えた不祥事が発覚し、内部犯行が疑われる。広島県警の実事件から着想したような筋立てにワクワク。サクラは公安警察の隠語。男社会で生き抜く泉のますますファンになる。
『どうしても頑張れない人たち ケーキの切れない非行少年たち2 』
宮口幸治/新潮新書/792円
児童精神科医の著者は前著で、認知の機能障害が非行の原因になる場合があるとの新視点を提供した。この続編ではのっけから盲点を突く。世間は更生少年達を"頑張ったら支援する"と励ますが、頑張れない人にこそ支援が必要と。安心の土台を作る、伴走する、支援し続ける。福祉に携わる人々への提言だが、支援に奔走する彼らを支援することは一般の我々にもできるはず。
『すみれ荘ファミリア』
凪良ゆう/講談社タイガ/847円
男性と暮らし始めた母から賄い付きの下宿すみれ荘を預かった33才の和久井一悟。下宿人は3名。そこに一悟がケガを負わせた作家の芥が加わるが、彼は24年前に別れた弟の央二だった。同じ屋根の下の心温まる疑似家族ものかと思いきや、思いがけない人物達の"毒"が周辺にしみ出す愛憎ドラマに。脇筋だが、家族や男女に関する旧弊な価値観を撃つ著者の姿勢が気持ちいい。
文/温水ゆかり
※女性セブン2021年6月17日号