売れた雑誌はすぐさま真似る「二番煎じ上等!」の精神で大ヒットを連発したのが、1972年に創業し、2013年に看板をおろしたサン出版。投稿写真、街角ナンパ、熟女や人妻……「エロ本の総合デパート」とも呼ばれた。アダルトメディア研究科の安田理央氏が、サン出版について解説する。
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日本のエロ本の歴史を語る上でサン出版は外すことのできない大きな存在だ。『Don’t』のようなコンパクトなA5判雑誌や『マガジン・ウォーB組』のような週刊誌サイズのB5判雑誌をコンビニで買ったのがエロ本との最初の出会いだったという読者も多いはずだ。大ヒットとなった雑誌は数限りない。
このように誰もが手に取りやすい「売れる」エロ本を作るのが得意でありながら、『JUNE』『性生活報告』『セクシーアクション』『投稿写真』『投稿ニャンニャン写真』『コミック・アムール』といった新ジャンルを開拓する先端性もあり、その一方で売れている雑誌をすぐにパクってしまうなんて面もあった。
また創刊時は『スコラ』を目指したものの、すぐに時流にあわせてコロコロ誌面を変えていったことで成功した『マガジン・ウォー』のような雑誌も多い。
1983年にアイドル雑誌として誕生した『ザ・シュガー』が、1997年に突然ナンパハメ撮り誌の『ストリート・シュガー』へとリニューアルした時は、そのあまりの極端な変貌に言葉を失ったものだ。
売れなければ、あっさりと路線変更をするというのはエロ本出版社共通の基本姿勢だが、サン出版は特にそれが上手いという印象があった。売れていないから路線変更をするわけだが、一歩間違えばさらにジリ貧になる可能性も大きい。しかし、サン出版の雑誌はその成功率が高かったのではないだろうか。
つまり時代の空気を読むのに長けており、その時々のニーズを的確に誌面に反映することができたわけだ。だから次々とヒットする雑誌を作れたのだ。
そしてエロ本業界が斜陽の時代を迎えると、あっさりとサン出版の看板を下ろしてエロ本から撤退してしまったのも、そうした社風から考えると頷けるのだ。
写真提供/サン出版 ※社史は非売品のため購入できません
※週刊ポスト2021年6月11日号