一帯が更地だった西新宿は、いかにして天空を貫く高層ビル群を擁する街に変貌したのか。1971年の京王プラザホテル開業から始まる、半世紀をかけた進化と発展の歴史を紐解く。
武蔵野の面影を残す西新宿が東京を代表する摩天楼街に変貌を遂げたのは、1960年の「新宿副都心計画」がきっかけだった。首都圏整備委員会による計画の内容は、それまで都民の飲料水を供給していた淀橋浄水場を郊外に移転させ、その跡地に“副都心”を建設するというもの。この大規模な再開発の先陣を切ったのが、1971年6月に開業した京王プラザホテルだった。
「戦後の復興ですでに賑わいを見せていた東新宿と違い、西新宿はまだ未開発の地でした」(京王プラザホテル営業戦略室・企画広報 支配人の杉浦陽子氏)
当時、郊外という位置づけの新宿での開業だったが、新宿初の巨大ホテルとして注目を浴び、好スタートを切ることに成功した。
京王プラザホテルを皮切りに、新宿住友ビル、KDDIビル、新宿三井ビルなど200m級の超高層ビルが相次いで竣工。1991年には東京都の庁舎が丸の内から移転してきたことで、“新宿新都心”はほぼ現在の姿となった。
西新宿の開発はバブル崩壊の影響で一時停滞したが、現在は無人の相乗りタクシーやARガイド・ナビゲーションアプリ、スマートサイネージの設置など、デジタル技術を駆使した街おこし計画である「西新宿スマートシティプロジェクト」が進行中だ。今も静かに西新宿は進化を続けている。
取材・文/小野雅彦 撮影/内海裕之
※週刊ポスト2021年6月11日号