ライフ

呉智英氏、高田明氏、釜本邦茂氏が語る「理想の死」と「避けたい最期」

各界の著名人は自身の最期をどう考える(写真は作家の呉智英氏)

各界の著名人は自身の最期をどう考える?(写真は作家の呉智英氏)

【NEWSポストセブンプレミアム記事】

 自らの死、身近な人の死に深くかかわることだからこそ、安楽死、尊厳死には賛否がある。近年は「自らの死に方を自由に決める」ということを権利と捉えるような議論も登場している。“決断”が必要な局面に備えて、一人ひとりが自分の考えを持つことも重要だ。各界の著名人はどう考えるか。意見を聞いた。

気持ちよく逝きたい

「重病になって苦しむのは嫌ですね。糖尿を患い、肺炎も併発したのに、医学の進歩で死ねなかった母は、最後の1年はずっと“早く死にたい”と言っていた。安楽死も尊厳死も賛成です」

 そう断言するのは、評論家で作家の呉智英氏(74)。日本では安楽死は違法、尊厳死はグレーとされるが、呉氏は、「2つに違いはあるのでしょうか」と問いを投げかける。

「安楽死と尊厳死、または単なる自殺の場合でも、その線引きは難しい。たとえば、20歳の若者が人生をはかなんで死を望むことと、80歳で老い先が短く治る見込みのない病気を患った人が死を望むことに、どこまでの違いがあるのでしょうか。

 もちろん、20歳の若者が失恋して自殺を望んでいれば『やめなさい』と止めるに決まっていますが、30歳で難病を患っている場合はどうなるのか。線引きをしようとすると、結論が出なくなる。私としてはそこを厳密にせず、安楽死も尊厳死も認めるのがいいと考えます」

 呉氏の母親は、亡くなる半年前に発症した肺炎から回復した後、何度も「あの時に死ねばよかった」と話していたという。

「なかなか『そうだね』とは言えませんよね(苦笑)。でも、もう糖尿で足の骨が露出しかけて、痛いし、苦しい。尊厳死にできたら良かったのかなと思います。一方で、医学的にどうやるのかの問題はある。麻薬のようなもので、意識レベルを下げていくことになるのか。とにかく、気持ちよく死んでいくのがいいって思うね」

「まだ死ねない」という思いも

実業家の高田明氏

実業家の高田明氏

 明確に賛成という意見もあれば、「まだ決められない」という声もある。通信販売大手「ジャパネットたかた」の創業者で実業家の高田明氏(72)だ。

「私はある時期から、『117歳まで生きる』と言ってきました。『今を生きる』ということを信条にやってきて、安楽死や尊厳死について『答えを出すのは、時期尚早』というのが、今の私の考えです」

 70歳を過ぎて、周りの友人が亡くなることも増えたが、それでもまだ「答えを出す時ではない」と考えているという。

「(東大名誉教授の)姜尚中さんが『長崎新聞(5月27日付「コトノハとの出会い」)』に寄せた原稿に、

〈全てのわざには時がある。(中略)あらゆる物事には起こるべきタイミングがある。この10年で僕も変わりました。時が熟成して初めて分かることがある〉

 と書かれていました。『全てのわざには時がある』とは旧約聖書の一節だそうですが、いつか私も安楽死や尊厳死と向き合う時が来るのだと思います。その時に考えればいい、という思いです」

 ただ、年齢を重ね、「死について考えるようになった」とも語る。

「死というものに縁遠かった60代から、70代になった今、心身ともに衰える部分はあるわけで、だんだんと“考えないといけないのかな”と思うようにもなりました。

 仲間と死に際について話す時も、60代の頃は『管を20本つないでも生きる』と言っていましたが、今は『10本くらいでもいいかな?』と、言うようになった。それが80歳になったら“5本でいいか、3本でもいいか”となるのかもしれません。もちろん、“やっぱり、管を20本つなぐ”と言うかもしれませんが(笑い)」

関連記事

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン