韓国ソウル市の中心部、龍山区の高級ブティックで、「万引きしたのでは」と勘違いされた駐韓国ベルギー大使夫人の相雪秋氏が店員との押し問答の末に、店員の顔面を平手打ちしたことが発覚した。相氏はソウル警察の取り調べを受けたが、大使夫人ということで御咎めなしだったことが判明した。
韓国のテレビ局が騒動の一部始終をとらえた監視カメラの映像を報道したことから、市民から多くの怒りの声が寄せられ、ピーター・レスコヒール駐韓大使と相氏も謝罪に追い込まれた。これを受けて、ベルギーのソフィー・ウィルメス外務大臣は「現在状況を考えると、レスコヒール大使が今後、職責を果たすことは難しい。今年の夏には彼の任期を終わらせるのが両国関係にとって最も有益であると考えている」との声明を発表し、事実上の大使更迭の決断を下しているという。英BBC放送が報じた。
騒動が起きたのは今年4月9日午後で、相氏はブティックに1人で来店し、1時間ほどの間に、いくつかの洋服を試着したが、気に入ったものがなく、何も買わずに店を出ようとした。ところが、相氏の着ている服と、さきほどまで試着していた服が似た色柄だったため、店員が外に出ようとする相氏を追いかけて、確認を求めた。
結局、相氏が着ていた服は自分のもので、店員の勘違いだったことが判明。収まらないのが、万引き犯と間違えられた相氏で、店内で店員に食って掛かった。これを仲裁しようとしたもう一人の店員が割り込んできたところ、相氏はこの店員の顔面を平手打ち。相氏はそのまま帰ったが、店員が警察に被害届を出したことで、韓国メディアが報道し、人々が騒動を知るところとなった。また相氏はこの直後、脳卒中の発作で入院している。
市民の怒りの声が広がったことで、駐韓国ベルギー大使館は4月29日、「ベルギー外務省が韓国警察の要請により、必要に応じて韓国側の捜査に引き続き協力することを決定した」との声明を発表。ベルギー外務省は、相氏がとった衣料品店での行為について、2人の店員に個人的に面会し謝罪した。警察の取り調べにも真摯に受け止める」と述べて、事実上の謝罪を行った。
相氏は1958年、中国の北京生まれで63歳。北京で、レスコヒール氏と出会い結婚し、2018年に韓国に大使として派遣された夫とともにソウルに駐在し、道教の養生学の専門家として、太極拳を教えているという。
今回の騒動については、中国国営中央テレビ局など中国メディアも詳細に報じており、中国のSNS「微博(ウェイボー)」上では、「また、中国の恥を広める事件が起きた」「太極拳の先生だから、殴られた方も強烈だったのでは」と相氏を批判する声がある一方で、「韓国の反中感情に火に油を注いだことで、ことが大きくなってしまった。でも、元はといえば、万引きしたと勘違いした店員の対応にも問題があったのではないか」と弁護する声も出ている。