19才で出会った彼と、22才で結婚し、翌年出産。屈託のない笑顔で0才の娘のことを語る彼女は、ステージIVの大腸がんと闘う。度重なる入院・手術、5月末に受けた余命宣告、そして退院後の日々──彼女はその胸中を日記に記していた。
〈5月31日(月)
朝一番から娘にミルクあげたり洗濯したり掃除機もかけられるし大抵の家事こなせる。え、幸せすぎる。(中略)お昼、テレワークで家にいたパパのために、さくっとぺぺ玉作った。これがしたかった! 幸せだよー! 本当に毎日幸せ! 好きな人たちに囲まれて好きな人たちのためにご飯作ったり掃除したり、生きてるって本当に幸せ! 死にたくない! 頑張らなきゃ! ここまで劇的に回復したからきっと大丈夫。余命数週間の人になんて見えないもん。もちろん24時間の点滴は必要だし口からご飯食べることはできないし、体力もまだまだ無いし、麻薬は必須でこれが無いと痛くてこんな生活はできないんだけど、それでもただ生きてるだけでこんなに幸せなら一生点滴でもいい。〉
青森県出身の遠藤和(のどか)さん(24才)は2018年11月、21才で大腸がん「ステージIV」の宣告を受け、闘病中だ。
「抗がん剤治療を始めると生殖機能が損なわれるおそれがある」と説明を受けた和さんは、2018年10月に卵子を採取、凍結保存。2019年12月、かねてから交際していた遠藤将一さん(30才)と結婚し、2020年7月には娘を出産した。
ステージIVのがんを抱えながらの妊娠・出産は簡単ではなかった。妊娠中に両卵巣に新たな腫瘍が発覚したのだ。
「『このままだとあなたが死ぬので帝王切開します』と言われ、27週で帝王切開して出産しました。娘はNICU(新生児集中治療室)に運ばれ、私は腫瘍摘出手術のため入院となり、2人で退院できたのは10月でした」(和さん・以下同)
退院後は、将一さんのサポートを受けながら、抗がん剤治療のための通院と、育児を両立させる日々を送った。
「あんなに小さかったのが?嘘みたいです(笑い)。うれしいような、寂しいような……子育てってあっという間なんですね」
しかし、家族3人で過ごす穏やかな日常もつかの間、再び病魔が忍び寄っていた。