「23番、24番、25番のかた、お並びください」
「少しでも異変があったら、スタッフにお申し出ください」
拡声器を通して全国でこんな声が飛び交っている。現在、国内における新型コロナウイルスワクチンの累計接種人数は約1165万人(6月3日現在)。会場には長蛇の列ができ、予約の電話番号にも連日コールが殺到する。それだけ早く接種を受け、抗体を作って自由で安全な生活を手に入れたいと希望する人が多いことの表れだ。
しかしその陰で、かき消されていく声もある。体の状態や生活環境などさまざまな事情で「打ちたくない」人もいれば、「打てない」人もいる。国は「あくまで接種は個人の自由」というが、本当に議論は尽くされているだろうか。
ワクチンを接種することによって自由を勝ち取った人たちがいる一方、人知れずため息をつく人もいる。フロリダ州のホームセンターで働く浅野育子さん(仮名・34才)は「副反応で仕事への支障が出るのが怖くて、接種をためらっている」と語る。
「もともとアメリカのファッション業界で働きたくて2年前に渡米しましたが、コロナの影響で仕事がなくなりました。いまはホームセンターに再就職できたけれど、シフト制の仕事なので、急に休めばその分だけ給与が減ってしまう。あまり長く休みすぎると解雇される可能性もある。
もし副反応が強く出てしまえば、長期にわたって休まなければならない。それが心配で、接種を受けることをちゅうちょしています。