208件。この数字は日本弁護士連合会が2日間設置した「新型コロナウイルス・ワクチン予防接種に係る人権・差別問題ホットライン」に届いた電話相談の件数だ。コロナ禍における問題として、感染者や医療従事者らに対する差別が挙げられて久しいが、ワクチン接種が広まるにつれ、「打たない」選択をする人たちに向けられた差別感情も大きな問題になっている。
ワクチン接種は医療従事者からスタートしたため、電話相談は医師や看護師などの医療従事者や医学生、看護学生が目立った。実際に応対した弁護士の川上詩朗さんが言う。
「特に学生の悩みは深刻です。学校から接種をすすめられたものの、過去にアレルギー反応があったから、しばらく様子を見たいと拒否する生徒さんもいる。すると学校側から『それでは実習を受けられない』『単位が取れなくなって卒業できなくなる』などと、圧力をかけられてしまうというのです」
介護施設で働く人が接種を拒否したところ『それなら辞めてもらう』『クラスターが発生したら責任をとれるのか』と、脅迫まがいのことを言われたケースもあった。学生たちと並んで、高齢者からの相談も多く寄せられている。
「持病があったり体力がなかったりして、いますぐに外出してワクチンを打つことに不安を感じる高齢者もいます。そんな中でも政府は、高齢者向けのワクチンを7月末までに終えることを目標にしているため、『このまま打たないと罰せられるのではないか』と思い悩んでいて、相談してくる人もいました」(川上さん)
医療ジャーナリストの鳥集徹さんはこうした「打たねばならない」という圧力に疑問を投げかける。
「確かにこれまでも医療従事者や実習生に対して、インフルエンザやB型肝炎予防のワクチン接種が義務付けられていることがありました。一般企業でも、銀行の受付スタッフなど不特定多数とかかわる業種の人が『お客さんに迷惑をかけるから』と職場に言われて、インフルエンザの予防接種を集団で打つこともあった。しかし、新型コロナのワクチンに関しては、これらと比べて、強制的に打つにはリスクが大きいかもしれない」
新潟大学名誉教授で医師の岡田正彦さんはリスクの中でも治験の期間が短いことが、いちばんの問題だと指摘する。
「インフルエンザを含め一般的なワクチンは、開発から臨床で使うまでに最低でも10年かかりますが、今回は10か月。あまりにも短すぎる。
また、成分も特殊で、新型コロナのワクチンと同じ『メッセンジャーRNA』という遺伝子を使ったものは、ほぼ前例がありません。
ワクチン接種後に血小板が減少する副反応があることはすでに報告されており、実際に米国では死亡例も出ています。海外の研究者の中には、流産、不妊症、認知症の悪化、心筋症の可能性を指摘する人もいます」
日本では、5月21日時点で累計85件の死亡例が報告されている。女性セブンでも報じたが3月19日に接種した26才の女性看護師は、4日後に亡くなった。夜勤の予定があるのに病院に出勤しなかったため、同僚が家族に連絡したところ、自宅の居間で亡くなっている姿が発見されたのだ。持病がなかったにもかかわらず、小脳から出血し、くも膜下出血を起こしていた。
同じく持病がなかった25才の男性は、接種して数日後に意識の混濁が確認され、迎えに来た家族と自宅に帰る途中、高速道路で車から飛び降り、後続車にひかれて亡くなっている。
「死亡例の多くは『因果関係は不明』とされていますが、インフルエンザの治療薬、タミフルを服用後に転落事故などを起こして亡くなった10代の患者も“因果関係は不明”といわれてきた。そもそも治療や薬において、その後の症状との因果関係を完全に証明することは難しいのです」(鳥集さん)