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認知症新薬アデュカヌマブ 治験参加の医師が見た「効果と限界」

アデュカヌマブ

米国で承認されたアデュカヌマブ(写真/時事通信フォト。エーザイ提供)

 6月7日、認知症の新治療薬「アデュカヌマブ」が、米FDA(アメリカ食品医薬品局)で承認された。米バイオジェンとエーザイが共同開発した新薬は、アルツハイマー型認知症の画期的な治療薬になると期待が集まっている。

 アデュカヌマブはこれまでの進行を遅らせる薬とは違い、アルツハイマー型認知症の原因とされる物質に直接作用する初めての治療薬だ。エーザイ社とバイオジェン社の株価が高騰するなど、その期待は高い。ただし、今回米FDAが下したのは「条件付き承認」。効果に懐疑的な意見もあり、追加の臨床試験を求められている。

「治験を行なった4人の患者さんのうち、3人に改善が見られました。軽度認知障害(MCI)の70代の患者さんは、治験後に1人で海外旅行に行くなど普通の生活を送れるようになるまで回復しました。アルツハイマー病の治療において、効果が期待できると考えています」

 そう語るのは、アデュカヌマブの治験に参加した患者を診た認知症専門医の眞鍋雄太氏(神奈川歯科大学附属病院認知症・高齢者総合内科教授)だ。

 現在約600万人といわれる日本人の認知症患者のうち、約5~7割を占める「アルツハイマー型認知症」は、脳に「アミロイドβ」というタンパク質が溜まることで発症すると考えられている。眞鍋氏が解説する。

「“脳のサビ”とも言える『アミロイドβ』が溜まり、放っておくと脳そのものを破壊する『タウタンパク質』が発生するようになります。これが脳の記憶を司る『海馬』に蓄積していくと、記憶力が低下します」

 アミロイドβは脳内で作られ通常は“ゴミ”として排出されるが、加齢や睡眠不足など様々な要因により排出が上手くできなくなると脳内に溜まるようになる。アミロイドβが蓄積すると、「老人斑」として脳に沈着し、神経細胞死を起こして脳が萎縮していく。こうして、認知症が進行していくのだ。

 アデュカヌマブはアミロイドβを除去する働きがあるため、“認知症の根本的な治療薬”といわれるが、その一方、“万能”ではないと眞鍋氏は指摘する。

「アデュカヌマブは、脳萎縮の回復やタウタンパク質には効きません。脳が萎縮したり、海馬が壊れたりした状態でアデュカヌマブを投与しても、記憶力が回復するわけではありません。つまり、タウタンパク質が発生する前に投与するのが望ましいのです」

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