コロナ・パンデミックの震源地となった中国は、しかしその後はコロナ禍を利用して自らの野望に突き進んできた。現在のWHO(世界保健機関)は中国の影響力が強いとされ、その「原罪」はほとんど追及されずにきた。他国に先んじてウイルスのサンプルを持っていたためワクチン開発も早く、街をまるごと封鎖して消毒するなど独裁国家ならではの強権的な対策によって感染を抑え込むことにも成功した。その後は自国のワクチンを発展途上国に大量供給して自陣営に引き込もうとする「ワクチン外交」を展開することで、欧米や日本がコロナ封じ込めに四苦八苦している間に覇権を築こうとしたのである。
しかし、ここにきて風向きは変わりつつある。途上国にバラ撒いたワクチンは有効性に疑問が出始め、中国製を主体として接種を進めた国で変異型ウイルスによる感染爆発が立て続けに起きている。WHOが中途半端な調査で「シロ認定」した「武漢ウイルス研究所」からのウイルス流出説については、アメリカの諜報機関やネット上の有志グループによる調査によって疑惑が再燃している。同研究所が銅鉱山のコウモリから見つかった新型コロナウイルスを採取・研究していたこと、その際に防疫が不十分だったこと、さらに流出説を否定していた研究者たちと同研究所の深い関係など、多くの状況証拠が「クロ」であることを示唆しているのである。
そして、ワクチン接種が進んだ欧米諸国がようやく危機を脱しつつあり、先のG7サミットでは、中国の人権問題に対する厳しい姿勢、カネとワクチンによる途上国支配に対抗することなどが打ち出された。中国は守勢に回り、今度は様々な疑惑の封じ込めに追われることとなったが、さすがに疑惑に効くワクチンは開発できていない。
そこに、日米が歩調を合わせた「ワクチン外交」が中国に大きな打撃を与えた。変異株による感染再拡大に苦しむ台湾に両国でワクチンを供与した際の「絶妙な演出」が中国政府を苛立たせているというのだ。パンデミックの初期には、台湾は徹底した感染対策でコロナ封じ込めの優等生と言われた。しかし、今年になって再び感染が拡大し、ワクチン接種を急ぐ必要が生じたが、ドイツのビオンテック社との契約を中国に妨害され、ワクチン確保が思うように進まなかった。同時に中国は、台湾に中国製ワクチンを提供しようとしたが、中国の支配を避けたい台湾側は拒否している。
そこに手を差し伸べたのが日本とアメリカだ。台湾がSOSを発すると、日本政府はすぐにアストラゼネカ製ワクチンを台湾に供与すると発表した。しかも、そのタイミングが中国へのメッセージになったという。中国問題に詳しいジャーナリスト、宮崎正弘氏が語る。
「台湾にワクチンを送ったのは6月4日、すなわち天安門事件のあった日です。これは台湾側からすれば中国に対峙する強いメッセージになりますし、その日を外さずに供与した日本政府は、台湾の戦略に賛同していたということです」
間髪入れず、6月6日にはアメリカが台湾にワクチンを届けた。こちらも中国を牽制する演出に余念がなかった。