容姿に恵まれず、収入も財産も乏しい中年男性を「キモくて金のないおっさん」、略して「KKO」というネットスラングが広まったのは、2015年ごろのこと。KKOこそ決して救われない社会的弱者なのではという問題提起だったが、キャッチーな呼び名が生まれただけにされてしまった。俳人で著作家の日野百草氏が、KKOを自称する元保育士男性に、「顔が苦手」と感じていることを主張の核にしたコラムが批判されたいま、KKOの境遇は変わったのかについて聞いた。
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「結局、ブサイクなおっさんに人権なんかないんですよ」
突然の大雨にも楽しそうな男女の嬌声が響く北関東の巨大ショッピングモール、内藤豊さん(42歳・仮名)は以前よりも沈んでいた。
「でも、お婆ちゃんまでブサイクなおっさんに冷たいなんて思いませんでした」
内藤さんは2020年3月の『41歳元保育士男性が語る「罰ゲームのような人生」の要因』で話を聞かせてもらっている。あのときの取材はちょうどバレンタインデーで場所も同じ。今回は6月12日の「恋人の日」は避けられたが、やはりおっさん二人がキッズコーナーの女児向けカードゲームを眺めながら語り合うというのは地獄だ。それでも他ならぬ内藤さんのため。
「すいません、いつも遠いのに来てもらって」
今回も内藤さんからの呼び出し。彼とは同人イベントで知り合ってからの長い付き合いで、女児向けアニメやゲームのキラキラな世界が大好きな乙女おじさんだ。
「僕、また介護士やってるんです。保育の仕事に戻るのは無理そうなんで」
内藤さんはかつて保育士をしていたが、彼の容姿は”ルッキズムの最底辺”(本人談)であり、幼少期から『ドラゴンクエスト』シリーズの「ばくだんいわ」他、ありとあらゆる蔑称を背負わされた。純粋な意味で子どもが好きで乙女な内藤さん、公立高校から保育の専門学校に進み、”子ども仕事は容姿重視”なんて面接ハラスメントに耐えながらも晴れて私立保育園に採用された。しかし「子どもが大好き」はイケメンなら心優しい青年だが、彼の場合は事案となる。結局、理不尽な女児に対するいわれなき疑いをかけられて退職せざるを得なくなった。内藤さん、以前の取材当時は二号警備で食いつないでいたが介護士の経験もある。それにしても、保育の仕事に戻りたいと言っていたのに再び介護の仕事についたとは。
「同じ介護でも有料老人ホームと特養だと全然違いますけどね」