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立川こしら イベント感を重視する演出で聴かせる独自の『帯久』

立川こしらの大ネタ『帯久』について(イラスト/三遊亭兼好)

立川こしら独自の演出が(イラスト/三遊亭兼好)

 音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接してきた。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、緊急事態宣言によって、急遽オンラインイベントとなった立川こしらの月例会より大ネタ『帯久』についてお届けする。

 * * *
 東京での立川こしらの月例会「こしらの集い」、5月は7日の開催予定だったが緊急事態宣言で中止となり、代わりに当日披露するはずだった内容を予め無観客で収録して同日時にツイキャスで有料生配信する「こしら師匠と一緒に楽しもう! 東京こしらの集い」というオンラインイベントが行なわれた。アーカイブなしで、画面右下にはリアルタイムで自らの高座を視聴するこしらがワイプで映り続ける。イベント感を重視するこしららしい演出だ。

 披露されたのは『やかん』『帯久』の二席。通常は“鰻の由来”(ウがナンギしたから)で出てくるだけの鵜をあらゆる名前の由来に結びつけるこしら版『やかん』は鉄板ネタのひとつ。一方の『帯久』は2016年初演の大ネタで、2019年の再演に続き、僕が聴くのはこれが三度目だ。

 人の好い呉服屋の和泉屋与兵衛が腹黒い同業者の帯屋久七に大金を貸したことが仇となってすべてを失い、帯屋の酷い仕打ちに耐えかねて火付けをしてしまう、大岡裁きの『帯久』。六代目圓生が上方から東京へ移した噺で、立川志の輔の演目として知られるが、もちろんこしらの演出はまったく異なっている。

 こしら版『帯久』は、町内の鼻つまみ者の鉄次郎という若者を和泉屋が引き取って更生させ、番頭に育て上げるのが発端。やがて帯屋は和泉屋に返しに来た百両をそのまま懐に入れて帰り、それを元手に大儲け。和泉屋は火事が切っ掛けですべてを失い、暖簾分けしてもらった鉄次郎が和泉屋を引き取ると、それを申し訳なく思った和泉屋は帯屋に出向いて「昔の貸しがあるはず」と迫り、せめて三十両融通してほしいと言うが、叩き出される。絶望した和泉屋、魔が差して帯屋に煙草の火をつけたところを捕えられ、奉行所へ。

 ここで粋な大岡裁きが下されるのが本来の『帯久』だが、こしら版では和泉屋はそのまま死罪となってしまう。「俺が引き取ったりしなきゃよかったんだ」と悔やむ鉄次郎。

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