空前の釣りブームと言われる現在、釣り漫画も人気ジャンルとなっている。かつて釣り漫画といえば『釣りキチ三平』を筆頭に少年や男性が主人公だったが、累計120万部を突破した『放課後ていぼう日誌』など、このところ釣りガールを主人公に据えた作品が活況を呈している。
『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの?』などの著書で知られるライターの飯田一史氏は「女子+風光明媚な舞台+アウトドア+食などといった組み合わせの作品が2010年代半ば頃から多種多様に台頭してきた流れがあり、釣りガール漫画もその一環と捉えられます」とブームを解説する。
往年の釣り漫画との違いについて、飯田さんが指摘するのは「競争」の有無だ。
「近年の釣りガール漫画は、魚を釣って調理して食べることの楽しさや、釣りを通じて人間関係が深まる喜びに焦点を当てています。『釣りキチ三平』や『釣りバカ日誌』のように、人間同士の比較、人間と魚の勝敗に力点を置いて描いていません」
釣りの快楽や豆知識を描く部分は過去の名作と共通しているものの、シビアな対決は描かないのが釣りガール漫画。
「なにかと競争を強いられる世の中の対極にある“まったり感”への需要が人気の背景では」(飯田氏)
和やかに釣りを楽しむ女子たちの友情が、読者にとって一服の清涼剤になっているようだ。
※週刊ポスト2021年7月2日号