被害者が声をあげはじめ、世の中が認識したことで問題が解決に向かう。それ自体は歓迎すべきことだが、代わりに別の存在がターゲットに浮上してしまうことがある。競技に取り組むアスリートをわいせつに見えるように歪めて撮影し、ネットで頒布している勢力が存在していると注目を集め、社会問題となった。その結果、卑劣な行為に手を染めた者たちは積極的に検挙、罰せられるようになったが、代わりに別の懸念が浮上している。ライターの森鷹久氏が、より弱い者がターゲットにされつつある危険についてレポートする。
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赤外線カメラを使い、女性アスリートらの衣服が透けたように見える状態の盗撮動画をネットで販売し、名誉を毀損した疑いで、千葉県警は会社員の男を逮捕した。
筆者は2020年の10月、盗撮被害に悩む女性アスリートや業界、そして実際に盗撮を繰り返していたと見られる人物へ取材し記事化した。それから一年以上経ったいま、改めて関係者へ聞き取りを進めていくと「やっと捕まったか」という声が聞こえる一方で、事態が「より深刻になっている」という見方も出始めているようだ。
「今年の5月、テレビ放送された女性アスリートの映像を無断でネットに転載したとして男が逮捕されていますが、摘発があっても、同様の行為をする卑劣な人が後を絶たない」
こう憤るのは、以前も取材に協力してくれたある大学スポーツの連盟関係者(50代女性)。こうした迷惑、いや犯罪行為が影響し競技生活を続けられなくなった選手がいることも明かしてくれていた。その後、事態が明るみに出て以降も、自身の競技中の写真がSNSなどネットに上がっていることを知った女性アスリートが複数いると話す。
「いろんな団体で対策を取っていますが、なかなかおさまらない。一番ひどいと思うのは、盗撮した映像や写真を販売するサイトが今も潰れず存在していることでしょう。盗撮被害にあった女性たちは、まず、盗撮で被害に遭い、勝手に販売されることでさらに多くの人の目に晒されて繰り返し被害に遭う。自分の動画が成人向けサイトに上がっているのを知って、日常生活を送ることすら怖いという女性がいることを知ってほしい」(大学スポーツ関係者)
今回逮捕された男も盗撮動画をネット上で販売していたというが、容疑者だけが行っていたビジネスではない。少しネット検索しただけでも、かなりの数の同様のサイトが確認できる。そこは著作権や被写体の権利や尊厳が無視されたコンテンツがずらりと並んでおり、ドラマや映画、アニメなど映像作品だけでなく、今なお女性アスリートの盗撮映像や、テレビ画面の録画映像の転売も散見される。
事情に詳しい、都内のAVプロダクション関係者が解説する。