新型コロナウイルス感染は変異株の蔓延で拡大スピードが加速中だ。また回復しても、後遺症に悩む人が相当数いる。その症状は倦怠感、頭痛、発熱、呼吸困難、咳、脱毛、味覚・嗅覚障害、筋肉痛など多岐にわたる。その中には、ひどい倦怠感で半年以上も寝たきりに近い状態となり、復学や復職できない人も。そこで後遺症専門外来が全国で開設、本格的な治療が始まっている。
新型コロナウイルスに感染すると患者の約半数に後遺症が見られ、20~30代では7割以上に上る(国立国際医療研究センター調査)。さらに最近では感染力が強く、重症化スピードも速い、いくつかの変異株が登場。若い世代でも重症化する人が増加傾向にある。
全国に先駆け、後遺症専門外来を立ち上げた、ヒラハタクリニック(東京都渋谷区)の平畑光一院長に聞く。
「変異株に置き換わっても、感染者の症状や状況などに変化はありません。ただ後遺症外来を受診する9割以上の方に強い倦怠感が見られ、起きられない患者も大勢いて、若い人の中には自力でトイレに行けず、実家で親に介護されている状態だったりします。このため当院ではオンラインによる診療が非常に多く、重要になっているのが現状です。治療の過程で危惧するのは後遺症から、筋痛性脳脊髄炎(きんつうせいのうせきずいえん)/慢性疲労症候群(ME/CFS)に移行すること。そうならないよう倦怠感のコントロールがポイントになります」
後遺症の仕組みとして臓器のダメージが指摘されている。新型コロナはヒトの細胞にあるアンジオテンシン変換酵素(ACE)2受容体と結合し、細胞内に侵入する。ACE2は肺だけでなく鼻腔、心臓、脳、腸などにも存在するので細胞に侵入後、それらの臓器が障害される。後遺症の一つとされるブレイン・フォグ(頭に霧がかかったようになり、集中力や記憶力が低下)が起こるのも、これが原因と考えられている。加えて侵入したウイルスを攻撃する免疫が過剰反応することにより、臓器が炎症し、後遺症が起こる可能性も指摘されている。
後遺症外来では他の病気の可能性を排除するため血液や画像検査を行ない、問診を含めて総合的に判断した上で治療法を決める。
「強い倦怠感がある場合、まずは安静にし、入浴や洗髪も負担になるので避けていただく。治療には主に漢方薬を処方。患者それぞれの体質と症状により、複数の漢方薬を組み合わせています。結果、多くの患者が長期服用で快方に向かっています。同時に、ほとんどの患者には上咽頭擦過療法(じょういんとうさっかりょうほう)を耳鼻咽喉科で行なうように伝えています。複数回、この治療を実施すると味覚・嗅覚の回復以外に倦怠、頭痛、発熱、咳など他の症状も軽減することが確認できているからです」(平畑院長)