その強さはまさに“モンスター”。米ラスベガスで行なわれたボクシングWBAスーパー、IBF世界バンタム級王者・井上尚弥(28)の防衛戦は、3回TKOの圧勝に終わった。
「相手と差がありすぎて、試合が早く終わってしまうから放送時間を埋めるのが大変です(笑い)」(フジテレビ関係者)
同じバンタム級でWBC世界王者となった薬師寺保栄氏も、その強さに舌を巻く。
「世界戦でいとも簡単に相手をボディーで倒せるのだから、抜きん出ていると思います。本当に非の打ち所がない。
同じ階級だから、『どうやって倒しますか?』って聞かれるんですけど、すっごく難しい。僕だったら左を使ってアウトボクシングでとにかく中に入らせない。入らせたら厳しい。ただ、長い距離からもパンチを合わせてくるので難しいかな……」
だが、そんな井上にも“足りないもの”があると、薬師寺氏は言う。
「国内どころか海外を見ても、ライバルと呼べる存在がいない。再戦が期待されているノニト・ドネア(WBC同級王者)にしても、次やったって井上選手が中盤までにKOで仕留めますよ。僕の場合は、幸い辰吉(丈一郎)がいたから」
1994年、WBC世界バンタム級世界王座統一戦として行なわれた両者の試合は「世紀の一戦」と話題を呼び、視聴率は関東地区39.4%、関西地区43.8%を記録した(試合は薬師寺氏の勝利)。井上の今回の試合は9.9%(関東地区)。時代が違うとはいえ、やや物足りない。
「今でも毎日と言うと大げさですが、人に会うたびに『辰吉戦』の話題になる。辰吉ありきかもしれませんが、それって幸せなことですよね。井上選手にもそういう相手がいればなぁと思いますね。やっぱり見たいですよね、井上とアイツならどっちが強いんだろうという試合を」(薬師寺氏)
強すぎるがゆえの“弱点”というべきか。
※週刊ポスト2021年7月9日号