コロナ禍で、さらに空模様も雨が続く──。外に出るのも気が重い、そんな日には読書三昧の1日を。注目の新刊4冊をお伝えします。
『小説8050』
林真理子/新潮社/1980円
80代の親が50代の子供の生活を支える。これが8050問題。近所でその末路を目撃した大澤夫婦は震撼する。あれは我が家の30年後の姿。ハタチになった息子の翔太を何とか立ち直らせなければ。翔太は声を振り絞る。「復讐したい」。7年前のいじめを知った父親は一緒に戦うと翔太を原告に裁判を起こすが、夫婦の亀裂も表面化し始める。ダレない展開と気分のいいラストで一気読み。
『もう時効だから、すべて話そうか 重大事件 ここだけの話』
一橋文哉/小学館文庫/836円
例えば未解決の世田谷一家惨殺事件。殺傷痕などから最新の3D映像で犯行の過程を再現すると冷静な拷問マシーンのような犯人像が浮かび上がる。和歌山毒カレー事件では、その分析も担当した科捜研の研究員が大量の証拠捏造で懲戒処分に。これで依願退職とは警察も手厚い。児童虐待事件などは増え続ける一方で、詳細を読むと泣けてくる。この国の病み具合を是非読んで。
『リボルバー』
原田マハ/幻冬舎/1760円
パリのオークション会社で働く冴の下に一丁の錆びたリボルバーが持ち込まれる。「ゴッホを撃ち抜いたものです」。え、自殺したゴッホは他殺だったとでも!? ゴッホ終焉の地を訪ねるトラベル要素、アルルで開花したゴッホの才能、タヒチで次々と傑作をものしたゴーギャンの生涯などが組み合わさったアートミステリー。文学的修辞を駆使したゴッホ絵画の解説は著者渾身の筆。
『幸せな人生のつくり方 今だからできることを』
坂東眞理子/祥伝社/1320円
コロナ禍で一変した私達の生活。ウインストン・チャーチルはこう言ったという。「せっかくの危機(グッドクライシス)を無駄にするな」。ではどのように生きたらいいのか。「今できることに集中する」「人を大切にして温かい人間関係をつくる」「知る楽しみに目覚める」「自分を大切にする」など、自身の経験から抽出した言葉がいっぱい。今日できることからすぐ始めよう。
※女性セブン2021年7月1・8日号