1年余り続くコロナ禍でウイルス封じ込めに成功し、「コロナ対策の優等生」として知られる台湾(5月以降は感染が拡大し、去る6月4日には台湾の求めに応じて日本からワクチン124万回分が無償供与された)。その対策ぶりはWHO(世界保健機関)が称賛するほどだったが、そもそも台湾はWHOの加盟国ではない。知っているようで知らない、台湾の現状と経緯について歴史作家の島崎晋氏が解説する。
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6月13日に閉幕した主要7か国首脳会議(G7サミット)では、「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促す」と、G7首脳の共同宣言に台湾海峡に関する言及が初めて盛り込まれたことが話題となった。
中国政府は「ひどい内政干渉だ」と強く反発したが、G7もその反応は織り込み済みである。それでもあえて明記した背景には、チベット自治区や新疆ウイグル自治区、内蒙古自治区などにおける少数民族の人権問題に加え、香港での民主化運動の弾圧、「一帯一路」や尖閣問題などに代表される覇権主義的な拡大路線を露骨に推し進める中国政府への警戒感、民主主義を掲げる台湾へのシンパシーなどがある。
日本や米国など西側諸国が、政治的にも経済的にも東アジアでもっとも信頼のおけるパートナーとして注目する台湾とは、改めてどんな国なのか。
台湾は新型コロナウイルスが蔓延するなかでも異彩を放った。今年の5月こそ、国際線のパイロットを発生源に感染者が急増する事態に見舞われたが、それまでは水際での防止と感染拡大の封じ込めに世界で最も成功していた。コロナ対策の陣頭指揮を執るのは日本の厚労相に相当する衛生福利部長の陳時中氏だが、日本では当部長よりも、現政権成立前まで政治家経験が皆無だったIT担当大臣オードリー・タン(唐鳳)氏の、ITを駆使した先進的なコロナ対策に注目が集まった。
まもなく開幕の東京五輪では野球の台湾代表がコロナ感染拡大を理由に出場を断念した。五輪などのスポーツの国際大会では、台湾は「中華・台北(チャイニーズ・タイペイ)」と呼ばれることが多いが、台湾の紙幣に書かれている通り、正式な国名は「中華民国」である。
実はこの「中華・台北」=中華民国=台湾はWHO(世界保健機関)や国際連合(国連)など、国際機関の多くに加盟していない。なぜか。その理由を説く鍵は、教科書や報道で目にすることの多い「一つの中国」という言葉にある。