新型コロナのワクチン接種が進んでいる。5月の連休明けにようやく接種が本格化し、6月には政府目標の1日100万回接種に到達、そのペースが加速している。そんな中、接種の“先進国”では、接種率が進んでいるのに感染が再拡大するケースが続出している。果たしてワクチンの効果をどうみればよいのか。ニッセイ基礎研究所主席研究員の篠原拓也氏が考察する。
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新型コロナは、ワクチン接種が進んでいる国と、進んでいない国の間で、感染拡大に差が出ている。
世界で最初に接種を開始したイギリスをはじめ、ヨーロッパ諸国やイスラエル、アメリカ、カナダなどでは接種が進み、ピーク時に比べると新規感染者数は大きく減少している。一方、接種が進んでいないブラジル、アルゼンチン、インドネシアなどでは、新規感染拡大が止まらない。
ワクチン接種を進めて早期に集団免疫を確立し、感染を収束させる──各国とも、そんな戦略のもとで接種を進めているようだ。日本でも、ワクチンをコロナ対策の「切り札」と位置づけて、国、地方自治体を挙げて接種に取り組んでいる。
ところが、海外で少し気になるニュースが報じられている。一部の国では、ワクチン接種が進んでいるのに、感染が再拡大しているというのだ。いま接種を加速させている日本では、こうした報道をどう受け止めたらよいか、少し考えてみることとしたい。
接種率40%超でも感染が再拡大している国
まず、現状を見ておこう。接種が進み、6月下旬の時点で接種率(全人口のうち、少なくとも1回接種を受けた人の割合)が40%を超える国が次第に増えてきている(※注)。
※注/ワクチン接種に関するデータは、オックスフォード大の研究者らが運営する「アワー・ワールド・イン・データ」による。
欧米諸国では、接種率が40%を超えると、接種のスピードが鈍化するケースがみられる。「接種率40%台の壁」ともいえる現象だ。その理由として、希望者への接種が一巡して、様子見をしている人の接種が進まなくなること、感染状況が最悪期を脱して人々の危機感が薄れてくること――などが考えられる。
ここで、接種率が高くても人口の少ない国は、日本にとってあまり参考にならないかもしれない。そこで、人口1000万人以上で接種率が40%を超えている国を調べてみると、17か国(ベルギー、カナダ、チリ、中国、チェコ、ドミニカ、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、オランダ、ポーランド、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、イギリス、アメリカ)が該当する。
このうち大半の国では感染拡大の勢いが収まりつつある。たとえば、アメリカでは、年始に猛烈な勢いで感染が拡大したが、接種が進んだ現在は新規感染者がピーク時の10分の1未満に抑えられている。
ただ、これら17か国のうち、チリ、ドミニカ、ポルトガル、イギリスでは、感染が再拡大している。それぞれ、簡単にみていこう。