新型コロナの感染拡大防止のために両国国技館での「東京開催」が続いていた大相撲だが、7月4日に初日を迎える名古屋場所は1年4か月ぶりに地方で開催される本場所となる。6場所連続休場中の横綱・白鵬が進退を懸けで出場し、大関・照ノ富士が3場所連続優勝と綱取りに挑む場所となるが、関係者の間では土俵上の取組だけでなく「土俵下」の問題にも注目が集まっている。
名古屋場所が開催されるドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)は最大収容人数が約7400人で、同約1万1000人の両国国技館とは大きな差がある。感染防止のため、観客数の上限は3800人となる(国技館では5000人)。5月から前売り券の一般販売がオンラインで始まったが、地元の相撲ファンにとっては、例年以上にチケットが入手困難となった。
そうしたなかで、一部の「維持員」からチケットの振り分け方について、疑問の声が聞こえてきた。
維持員制度とは、協会に対して所定額の「維持費」を寄付した人たちが、土俵周りの「維持員席」での観戦が認められる制度のことだ。本場所が開催される東京、大阪、名古屋、福岡のそれぞれに維持員がおり、1場所あたりの維持費は23万円で、原則として6ヶ年分を一括で寄付する。年3回開催の東京の維持員なら414万円、年1回の地方場所の維持員でも138万円を支払うわけだから、相当熱心な好角家が揃う。
相撲協会のHPでは、維持員席について〈土俵下の溜席を充てることになります。東京、大阪、名古屋地区は300席、福岡地区は250席〉としている。“砂かぶり”とも呼ばれる溜席は通常であればおよそ500席程度が用意されるが、その半分以上を維持員が占めていることになる。それだけ重要な存在というわけだが、新型コロナの感染拡大防止のために、最大収容人数の半分しか観客を入れないことが、思わぬ騒動に発展している。名古屋場所の維持員のひとりはこう話す。
「本場所を前に協会から通知が送られてきたのですが、『観戦を希望する維持員には溜席ではなく、桝席か椅子席を案内する』という内容なのです。維持員はその名の通り、相撲の維持・発展を目的に、本場所の取組をいちばん近くで見守る存在だと思ってきました。それなのに、後方の枡席や椅子席で見ろというのです。コロナがあるから溜席に客を入れないというならまだ納得できますが、間を空けながら溜席の一般販売をしているのです」
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