7月1日に創立100周年を迎えた中国共産党が、難局に直面している。習近平指導部は2050年までの「超大国化」を掲げるが、それと同時並行で前例のない超高齢社会に突入するのだ。1970年代後半からの改革開放政策で米国に次ぐ経済大国に躍進した巨龍の“変調”は、世界に甚大な影響を及ぼすことになる。
中国国家統計局によると、2020年の中国の総人口は14億1178万人。出生率が過去最低となった一方、65歳以上人口は約1.9億人に増え「少子高齢化」が顕著になった。2022年にも人口減少に転じる可能性が指摘され、政府系シンクタンクの試算では2050年に60歳以上が5億人に迫ると予想される。
中国政府は少子化対策として、1979年に導入した人口抑制策「1人っ子政策」を2015年に撤廃。2人目の出産を許す「2人っ子政策」を始めたが、案に相違して2017年以降も4年連続で出生数が前年を下回った。
そこで、今年5月末には、夫婦1組につき3人まで子供を認める方針を発表。いよいよ「3人っ子政策」に転じようというわけだ。
政策の“大転換”だが、中国国民の反応は冷ややかだ。国営新華社通信の調査では実に9割が3人目の出産は「全く考えられない」と回答した。
1人っ子政策時代に生まれた20~30代が出産を躊躇い、3人っ子政策が“焼け石に水”となる最大の理由は、高騰する教育費だ。
「子供は一家に1人」だったために、父母や祖父母の教育熱は高まり、幼少期からの塾通いは当たり前で、日本以上の受験社会になった。ニッセイ基礎研究所保険研究部准主任研究員の片山ゆき氏が言う。
「中国メディア『第一財経』によると、子供の高校卒業までにかかる平均教育費は約70万~233万元(約1120万~3730万円)。北京や上海などの大都市はそれ以上に高騰しています」
政府が“3人目の子供を”と号令をかけたところで、経済的理由で子供を増やせないという問題がそのままでは、効果は期待できまい。
※週刊ポスト2021年7月16・23日号