中国・四川省で発見された新種の肉食恐竜の足跡化石に、『ドラえもん』のキャラクター「のび太」の名前がつけられた。その名も「エウブロンテス・ノビタイ」。この新種を発見した中国の研究者が大のドラえもんファンであることがきっかけだという。
2021年7月、中国地質大学(北京)の恐竜足跡研究チームが、「中国四川省の白亜紀前期足跡化石の新種エウブロンテス・ノビタイ」に関する論文を公開した。恐竜名の最後の「ノビタイ」の部分が、ドラえもんの「のび太」に由来する。
この貴重な化石が中国四川省で発見されたのは2020年7月のこと。四川省を襲った集中豪雨の後、ひっくり返った板状の岩石の上に4つの足跡が刻まれているのが見つかった。中国地質大学(北京)のシン准教授らがこの足跡を詳しく調査した結果、肉食の恐竜エウブロンテス類の新種であることがわかり、この研究が国際的な学術誌で認められたことで新恐竜の命名に至った。
シン准教授は1982年生まれの39歳。子どもの頃からの『ドラえもん』ファンで、2020年12月に中国で公開された『映画ドラえもん のび太の新恐竜』(日本では2020年8月公開)の中で、のび太が新種の恐竜に自分の名前をつけているのを聞いて、今回の恐竜にのび太の名前をつけたとのこと。学名はラテン語の文法でつづられるのが基本で、「のび太」に人名を示す接尾辞「i(イ)」をつけてエウブロンテス・ノビタイ(Eubrontes nobitai)と命名した。
シン准教授は今回の発見、命名にあたり、次のようなメッセージを寄せた。
「のび太とドラえもんは多くの中国の子どもたちにとって非常に大きな存在です。『ドラえもん』は想像力、好奇心、そして優しさにあふれた作品で、私にとってもかけがえのない楽しい子ども時代の思い出です。感謝の気持ちをこめて、新発見のこの化石に『のび太』の名前をつけました」
エウブロンテスは元々アメリカのコネチカット州で発見されたジュラ紀の肉食恐竜の足跡につけられた学名で、エウ(真の)+ブロンテス(地響き、雷)という意味。二足歩行で、3本の指先に鋭いカギツメの痕があることが肉食恐竜の証だ。ノビタイは白亜紀の地層から初めて発見されたエウブロンテスになる。
ノビタイは、これまで報告されているエウブロンテスの他の種よりも第2指と第4指の左右の開きが大きいこと、中央の指(中指)がやや外側に向いていること、幅広な足をしていることなどから新種と認められた。
足裏の長さ(約31センチ)から、ノビタイは全長4メートル程度と推察され、今から約1億2500万年前の白亜紀前期に地上を歩いていたと考えられている。ただエウブロンテスはこれまで足跡の化石しか見つかっておらず、どんな恐竜だったのかはまだよくわかっていない。