伊豆半島の付け根にある静岡・熱海は、のどかな雰囲気と全国でも有数の湯量を誇る良質の温泉地として、江戸時代から多くの人に愛されてきた。歴史ある街並みが地獄絵図と化したのは7月3日、午前10時半頃のこと。すさまじいどす黒い濁流があたり一面をのみ込んでいった。家や車が猛スピードで流され、人が消えた。降り続く雨の影響で、市内を流れる逢初川の河口から約2kmの地点が起点となり、土石流が発生したのだ。
被害を受けた住宅は約130棟。7人の死亡が確認され、行方不明者は27人に上る。家を離れ、公共施設や旅館などに避難している人は580人以上。いまもなお、土砂に足をとられながら、警察や消防、自衛隊を含め約1100人態勢で救助活動を行っている(被害状況は7月6日時点)。
土砂が街をのむ様子を目撃していた60代の女性は、その瞬間をこう振り返る。
「雨とは違う『ゴゴゴゴゴ』という雷が遠くで鳴るような音がして、窓の外を見たんです。そうしたら、大きな木を巻き込んだ土砂が、隣の家に流れ込んでいた。うちの家の方にも来るかもしれないと、慌てて3階に避難しました。
30分ほどして、流れが収まったかなと思ったタイミングで、また、地響きのような音がした。今度はもっと大きな4〜5mもある黒い土砂が波のようにこちらに押し寄せてきて、あっという間に2階まで埋まった。本当に生きた心地がしなかったね……」
今回、最も被害が大きかった住宅地は、熱海駅から徒歩20分ほど。車だと5分もかからない距離だ。付近には、小泉今日子(55才)が奉納した鳥居がある伊豆山神社があり、年間を通じて多くの観光客が足を運ぶ地域だ。翌4日も早朝から救助活動が始まったが、正午頃に小規模ながら新たな崩落が発生。危険と隣り合わせの状態で、現在も救助活動が続いている。
「土曜日は、心配で眠れぬ一夜を過ごしました。一日も早く、被災者のかたがたが安心して暮らせるようになることをお祈りしています」
心配そうに目を伏せながらこう話すのは、熱海でギフトショップを2店舗経営する五月みどり(81才)だ。流れ込んだ雨で地下倉庫に浸水があったものの、スタッフ共に無事だという。
不安な日々を過ごす著名人は五月だけではない。熱海には、芸能人が住む高級マンションや別荘が点在している。泉ピン子(73才)は10年ほど前に移住、藤井フミヤ(58才)もセカンドハウスを持つ。土石流が発生した後、SNSで無事を報告する芸能人も少なくなかった。
両親が熱海に住む芸能人も多数いる。羽田美智子(52才)や丸山桂里奈(38才)らは、両親が熱海に暮らしていることを明かしており、香取慎吾(44才)も静かに被害状況を見つめていた。
「実は、香取さんの両親は、10年ほど前から熱海の高級リゾートマンションに住んでいます。もともとは伊豆に別荘を持っていて、老後は海辺の街で暮らしたかったのだとか」(芸能関係者)
静かに余生を送る場所としても人気だった熱海だが、災害に対する脆弱性が顕になってしまった。
※女性セブン2021年7月22日号