世界ランク1位の桃田賢斗選手らを擁する日本の新たなお家芸・バドミントン。ヨネックスが東京五輪に派遣するストリンギングチーム所属の中原健一さんは、日本代表の公式ストリンガーも務める凄腕の職人だ。
ストリンガーとは、選手が使用するラケットにストリング(糸)を張る専門家を指す。寸分の狂いなく選手の望む硬さに仕上げるのはもちろんのこと、「会場の気圧、気温、湿度、風などの条件を踏まえて、最高のパフォーマンスを発揮できるようにテンション(張り)の強さを調整する」(中原さん)ための繊細な技術と経験が求められる。
バドミントンを始めた中学生時代に「張る楽しみ」に目覚めた中原さん。その後、「選手として最初に利用したお店」だというラケットショップフジに就職した。テンションを強くかけすぎるとラケットが折れてしまうこともある。中原さんは慎重に、かつ素早くストリングを張っていく。1本あたりの所要時間は15~20分。
中原さんにとって気がかりなのはウイルスの存在だ。
「ストリンガーは選手のラケットを一番触るポジションなので、感染予防対策は人一倍しっかりやらなければいけない。チームのメンバーと共に最大限まで意識を高めて大会に臨みます」
金メダルが期待される桃田賢斗選手も、中原さんに全幅の信頼を寄せる。日本代表にとってもストリンガーの存在は欠かせない。
撮影/内海裕之
※週刊ポスト2021年7月16・23日号