古代の彫像、中世の油絵、近現代の写真……。「尻」は人類の美術にとって永遠のモチーフである。現代日本において、尻を作品に昇華することに取り憑かれたアーティストたちがいる。
「人間の体の中で、最も大きな肉の塊がお尻です。腰からお尻へのくびれ、太ももへと至るラインは女性の健康美の象徴。だから私は描き続けているのです」
そう熱弁するのは、油彩画家の三嶋哲也氏。学生時代から古典絵画に心酔し、22歳で初の個展を開催。年間100点以上の静物画を描いて研鑽を積み、毎年のように三越や西武などの百貨店で個展を開いてきた。
「画家として静物画で様々な鍛練を積んできました。転機となったのは画業10年目、2004年に良いモデルと出会い、思春期からエロティシズムを感じてきた女性のお尻のヌードを描いて評判を得たんです。その後、2009年に再び良いモデルとの出会いに恵まれ、お尻を本格的に描くようになりました」
現代では写真を見て描く画家も多い中、三嶋氏はモデルのお尻を見ながら描く古典的なスタイルを貫く。そうして描き続けたお尻の絵画は50点以上に及ぶ。なぜ三嶋氏は、これほどまでにお尻の魅力に取り憑かれたのか。
「今や整形の技術が進歩し、豊胸が当たり前の時代になってきた一方、多くの女性のお尻はまだ“生まれたまま”です。おっぱいが夢なら、お尻は真実。私はこれからも、その膨らみをありのままに描いていきます」
【プロフィール】
三嶋哲也(みしま・てつや)/1972年、長野県生まれ。日本橋三越、日本橋高島屋、池袋東武、西武そごうなどの数々の百貨店や、銀座秋華洞などの画廊で個展を開催。お尻の魅力に取り憑かれ、50点以上の作品を制作。
取材・文/河合桃子 撮影/藤岡雅樹
※週刊ポスト2021年7月16・23日号